2011年12月20日火曜日

ロッキー・ホラー・ショー

ロッキー・ホラー・ショー
脚本・作詞・作曲:リチャード・オブライエン
演出:いのうえひでのり

出演:古田新太/岡本健一、笹本玲奈/中村倫也、グリフィス・ちか、
右近健一/辛源、ニーコ/飯野めぐみ、生尾佳子、JuNGLE、皆本麻帆/
ROLLY/藤木 孝

今回のRHSで感動したのが「日本的アレンジ」の一つの正解について。
今回のRHSは新感線的なボケ・ツッコミがふんだんに入っている。
おなじみの「ガスッ、ゲシッ」というSEの入るツッコミね。
これが素晴らしい効果を生んでいた!

台詞もあらすじもほぼ固まっているRHSという舞台はいじるのが
難しい・・・と思う。
ファンは新しい素敵なサムシングを期待しつつ、同時に「変わらずに
いてほしい」という気持ちを強烈に持っているから。
オリジナルを尊重しすぎてそのまんま使えばこれならDVD見てりゃいいと
言われ、アレンジ入れすぎて屋台骨を崩してしまうとこんなのRHSじゃねえと言われ。

そんな貴方に今回のRHSツッコミバージョン!
このツッコミという装置の優秀さよ。まず時間をくわない。
オリジナルの台詞と台詞の間にドカッ!ガスッ!と入れるだけで、一瞬で
"笑いを増幅する演出”になる。
そして後を引かない。これは新感線ツッコミのプロフェッショナルな古田さん
だから特に切り替えが上手いのだけれど、相手の体が吹っ飛ぶくらいの
パンチ入れても次の瞬間舞台の流れが元に戻る。

さらに予測不能なバイオレンスってそれだけで面白い。いや、予測できても
バイオレンス面白くて気持ちいい(笑)
いのうえさん、三池監督好きだもんなあ。
事前のインタビューやラジオでRHSに近い映画として「キックアス」が
入っていて、ん~そうかな?と思ったのだけれど、今回の舞台を見て
ちょっと納得したよ(笑)映画版でも私、フランクがジャネットにビンタ
かますシーン大好きなんだわ。

このSE付きボケ・ツッコミの演出で、海外のミュージカルを「日本的に」
アレンジしたということが素晴らしい。
私は、日本独自の質の高いオリジナル作品が生み出されて初めて、
”日本が成熟した文化としてミュージカルを持つ”ということになるのだと思ってる。
もっと欲を言えば、その作品が海外に輸出されるくらいになることが理想で、
残念ながら今はその状態じゃない。

オリジナルを作るにしても海外ものを輸入して演出するにしても、どうも
「ミュージカルは本来西洋のものだから…」というコンプレックスが邪魔をする。
そして「和を取り入れてみました!」ってことで、衣装に着物を使ってみたり
見栄を切らせたり、演奏に和太鼓や雅楽を使ってみて・・・スベる(笑)

でも、今回のRHSで「和を取り入れるって歌舞伎や芸者やフジヤマだけじゃ
ないよ。漫才、ボケ・ツッコミの笑いセンスだって他の国にはない日本的なもので、
きっとまだまだ他にもあるよ」という可能性を教えてもらったような気がして。
客席で勝手に感動してました。一観客なのに。

ロッキーホラーショー番外編

・オープニングの20世紀FOX(空飛ぶパルコアラw)からラストの
アレまでPARCOの提供が全開。PARCOプレゼンツ!
うん、HedwigといいRHSといいキワモノやゲイプレイ優しいパルコは偉い。
足を向けて寝られません

・今回のファントムにオカマは混じっていません(笑)
4人とも美人女性です

・ブラッドは誰がやってもあまり変わらないような…。
玲奈ちゃんのジャネットは前回の池田さんがかなりデフォルメの強い
マンガちっくな役作りをしていたのに対し、等身大なお嬢さんを演じている
感覚でした。

・KAATは新しくて綺麗な劇場なのだけれど、1階に広いメインロビー
がないのがさみしい。早く着くと居場所がなくて落ち着かない。
芸術監督の宮本亜門さんが客席にいて目立ってました

・ペンライトつけてる人多くて嬉しい
私が初日チケットを取ったのは、初日にペンライトの明かりが沢
山つくと俳優さん達が喜んでくれるんじゃないかな、と思ったからで。
おこがましいかもしれないけれど。
明かりを通じて「待ちわびているファンがこれだけ来てるよ!
上演してくれてありがとう!」と伝えたかった。

・タイムワープにアレンジが加わったのですが、狭い座席で踊るには
ちょっと難しかったのでオリジナルバージョンで踊ってしまいました
一階席中央ど真ん中で、高橋ヨシキさんが誰より先に立って踊っていたYO
ありがたい。毎回観に来てタイムワープの先導してください(無茶言うな)

・休憩中に流れる音楽がRHSゆかりの選曲らしいのですが、ジーザス
クライストスーパースターのゲッセマネがやたらと流れる。
ちょっ、重っ(笑) なぜゲッセマネ?!

・もちろんパンフレットをがっつり読むよ。
新感線のパンフは一時期高額の美麗写真集のようになっていて
読むべき記事があまりなかったので買わなくなっていたのですが
今回は読みどころだらけです。買うべし。

・藤木さん所蔵の初演フランク写真が想像とたいぶ違っていて
驚く。えっ、こういう髪型だったの?

・古田さんの挙げているお気に入り。
劇団リストにかわいがっている鹿殺しが入っているのは予想通り
だけど、好きな音楽に面影ラッキーホールが!
確かに古田さんと面ホは似合いそうだ(笑)。

・辛源くんの好きな人リストにLin-Manuel Miranda。
ごめん、RENTのオリジナルエンジェルって書いちゃったけど
「イン・ザ・ハイツ」のクリエイターだった(恥)

・今回のROLLYの訳詞。
残念ながら私はあまり好きになれなかったなあ。
特に今回日本で初CD化になって、今後RHSの歌を歌う場合に
この歌詞がスタンダードになることでしょう!みたいに書かれて
いると、うーん。。。

だって映画や海外公演を見て、かっこいい!この歌を日本語で
唄いたい!とCDを買ってあの歌詞をみたらとまどわないかなあ。
チョメチョメして・・・。
パロディならいいと思うんだよ。もしくは、もっとスタンダードに
訳されたCDが1枚あって、2枚目として出されているならば
このバージョンも面白いね、と思えるのだけれど。

いやしかし、ロックやロックミュージカルが好きな人にとっては
この「歌いやすさ&空耳英語っぽさ最優先」は正解なのかもしれないね。
私はどちらかというと正統派(?)ミュージカル好きなので、
歌詞には美しさを求めてしまうのかも。