2016年2月23日火曜日

すいているのに相席3.5

★野球へ行くつもりじゃなかった
「磯野、野球やろうぜ~!」
中島(尾関)が何度呼びかけてもカツオ(野田)は家から出てこない。
中島は徐々に苛立ち始め、カツオを家から出すために執拗な作戦を立てはじめる。
 
今回少々遅刻をしてルミネに入ると、舞台上で中島が契約書を読み上げながら
カツオを脅して磯野家に突入しようとしていた。
ヨネスケの亜種だ。恐ろしい。
 
★殺陣師左近3.5
189cmの大男を芦田愛菜だと思い込み、独自に作成したCDショップリスト
(口裂け女はCDショップを恐れるから)をくれる狂気の殺陣師左近先生。
三度、あらわる。
 
お騒がせの不倫騒動について、ピザハットに苦情の電話を入れている。
「ベッキーって何だ?!私はね、うつみ宮土理のことを言っているんですよ!!」
2016年にキンキンケロンパの不倫について熱く怒るのは左近先生だけ。
今回は左近先生が繰り返し語るエピソードに登場する越前蟹狂四郎先生(野田)が登場。
台詞は「左近、これは殺陣(縦)じゃなくて横だな」のみ。
 
★魔王
東京フレンドパークのスタジオ観覧に当選した親子。
楽しみにしている父親(尾関)の横で、息子(高佐)は具合が悪そうだ。
熱にうなされて幻想を見る息子とそれをなだめる父親。
シューベルト「魔王」と東京フレンドパークの奇跡の融合コント。
 
息子の演技がマイナーチェンジしていて素敵。
父親に訴える姿はオーバーアクションで、幻想にうなされ茫然とした様子は
暗闇を見つめながらゆっくりと。
父親(尾関)のバリトンボイスもよく響く。
しかし、この暗闇の向こうで為ちゃんがウォールクラッシュに駆け登り、ベース音を
頼りにドラムを叩いているのだ。
想像すると、シュールさも倍増である。
 
★雷
いつもくだを巻いている赤(亘)・緑(野田)・黒(バ吾)の雷様。
今日も今日とてとりとめのない会話をしていると、そこに一陣の風が吹く。
現れたのは、雲の上にいるという伝説の雷様を求めてやってきたシータ(山脇)と
パズー(高佐)だった。
 
緑の雷様が尾関→野田という変更になり、高木ブ―らしさが10あがった!
何度聞いてもAさんのいかりや長介ものまねは絶品。
いつまでも聴いていたい。
 
★声
敵に見つからないように行動する三人。
その中の一人がいっこく堂(尾関)であったことによりおこる悲劇。
あの時声が遅れなければ、仲間を助けることができたのに。
 
三人目の名前が出るところでさざ波のように笑いがおこるのが堪らない。
元自衛官だった亘さんによる本格的なガンアクション。
 
★美輪さんとかくれんぼ
美輪さんとかくれんぼをして遊ぶ学生服姿の青年(野田)。
姿を消してしまった美輪さんの代わりに見つけた綺麗な花は、彼女と同じ
美しい黄色だった。
 
すいているのに相席では高佐さんが、観ているこちらの背中がモゾモゾしそうな
昭和的耽美青年を演じていたこのコント。
オリジナルは野田さんのピンネタだという。
えっ、あの鬼ヶ島の野田さん?全然想像がつかない!
そう思っていたら、なんと今回の相席3.5では原点回帰の野田バージョン。
これがもう、なんというか、絶妙なキャラ造形だった。
見た目の気持ち悪さを野田さんの持ち前の愛嬌で完璧にカバーしている。
きもかわいい、ともまた違う。
 
★あいせきみんなのうた  ギザギザハートの子守唄
藤井フマナイヤ(バ吾A)の適当替え歌でお届け。
 
そろそろフルで一緒に歌えるかもしれない。
 
★恵方巻き
節分の日に、恵方巻きを食べながら窓から妻(山脇)の浮気を
目撃してしまった男(尾関)。
「やめろ!と叫びたかったが・・・福が逃げてしまうのでやめた」
 
スーツで帰ってきた旦那さんが、部屋着に着替えるあたりが細かい。
今年の方角は南南東で、山脇さんは言い間違えないように何度も練習していたらしい。
 
★こどものタヌキ
もはやこどものタヌキはすいているのに相席の通過儀礼。
今回のタヌキ枠は亘さん。
 
J-WALK
J-WALK(尾関)のコンサートにやってきたカップル(バ吾A、山脇)。
ヒット曲「何もいえなくて…夏」を楽しんでいるうちにおかしな事に気づく。
何度も何度も繰り返す同じメロディ。歌がループしている。
「俺達はJ-WALKに囚われてしまったのかもしれない」
このままでは夏が終わらない。会場で見つけたJ-WALKリーパー達と共に
J-WALKから脱出する方法はあるのだろうか。
 
上田さんの書く奇妙なコントがとても好きだ。
最初、このままJ-WALKを延々と眺めるだけのコントだったどうしようと不安になるほど
長く曲を聞かせて、途中から一気に空間がぐにゃりとねじ曲がる。
熱狂する会場の中で見つけたJ-WALKリーパーは、J-WALKに囚われて5日目のサラリーマン(亘)と、
もう10年以上もいる老人(野田)。
殺陣師左近に出てきた越前蟹狂四郎といい、野田さんの演じるキャラクターの強さに圧倒される。
どんな物語の流れの中でも、彼が出てくるだけで否応なしに「お笑い」に
持っていくことができる。その強烈さと力強さ。
 
 
★毒蝮三太夫のミュージックプレゼント最終回
本日が大沢悠里のゆうゆうワイド 毒蝮三太夫コーナー最終回ということで
相変わらず毒舌の毒蝮(バ吾A)。
応援にきてくれた老人達(高佐、山脇)を追い払うと、物陰に鋭い目線を投げつける。
そこに現れたのは、巣鴨に完成させた魔界と人間界を繋ぐ道から魔族を送りこみ
世界を滅ぼそうと企む魔物(尾関)だった。
かつての親友・立川談志の仇でもある魔物と激しい戦いを繰り広げる毒蝮。
しかしあまりにも強大な敵の力に、もはやこれまでと諦めた彼の耳に音楽が届く
♪大沢悠里の~ゆうゆうワイド~
老人達の愛と歌の力が、魔物を追い詰める・・・!
 
ゆうゆうワイドが終了するという報のあった時期にこのコントが入ったのは、
偶然だったのか意図的なものかはわからない。
しかし、終わるとわかって観てみると老人の歌うゆうゆうワイドジングルに、妙に
グッとくるものがある。
コントの中でまむちゃんは世界を救ったけれど、実際にこのラジオは多くの人々の生活を
時計のように支えて、ある意味“守って”くれたのではないだろうか。
 
★モノボケ部
世界大会に向けてモノボケの特訓をしているモノボケ部部長(バ吾A)。
愉快な部員(野田)やかわいいマネージャー(山脇)といつものようにふざけていると、
突然手下(亘)を連れた、見慣れぬ青い髪の青年(高佐)が現れる。
氷河と名乗る彼は自らを「モノボケ四天王の一人」だと告げ、部長にモノボケ対決を挑む。
馬鹿にされて向かってきた部員を、一瞬で氷漬けにする氷河。
彼は氷を操る能力の持ち主なのだ。
敵いっこないとマネージャーに止められるも、部長は持ち前の知恵と勇気で氷河に立ち向かう。
 
炎を操る刺客があらわれた「大喜利部」のパラレルワールドになっているコント。
とりあえずファンの間では、氷河様の人気が急上昇だった(笑)
いかにも漫画で愉快だなあ。ザ・主人公のAさんもかっこいい。
ここでも野田さんが良いスパイス役だった。
 
★ボウリング
完璧なフォームでボウリングをする男(野田)。
ボウリングの球だと思った物は春キャベツだった。
VEGETABLE
 
Aさんのライブで披露した時にやや滑りしたギャグ「春キャベツボウリング」。
憤慨してこのギャグは野田にやらせる!と言っていたけれど、まさか本当に
相席でやるとは。
映像をわざわざ作ったり、演出がAさん&せきしろさんの二人がかりだったりと
意外と贅沢だったコント。
 
★天使
<ベルギー・フランダース地方に絵を描くのが得意な少年ネロ(高佐)と祖父ジェハン(亘)が、
貧しいながらも周りの人々に助けられながら暮らしていた。
金物屋に酷使され捨てられた犬パトラッシュ(バ吾A)を拾い、一緒に暮らすようになるネロ。
しかし祖父が過労で亡くなり、孤児となった貧しいネロに世間は冷たかった。>
願いだった絵のコンクールにも落選したネロは、パトラッシュと共に訪れた
教会のルーベンスの絵の前で天使の音楽を聞く…このまま天に召されてもいい…
♪ギュィイイイイイイイーン
「ギターの音?天使の音楽じゃない。アルフィ―高見沢さんのギターの音だ!」
 
突然始まる「星空のディスタンス」。激しく歌い踊るネロとパトラッシュ。
舞台袖からコゼツ(尾関)、アロア(山脇)、村人(野田)も手拍子をしながら現れる。
ネロ「みんな、今日はフランダースの犬ミュージカル『フラミュ』に来てくれて
ありがとう~~~!!!」
 
忠実な世界名作劇場パロディが始まったので、最後のコントだからここから
感動的なストーリーになるのかと思っていたら、目まいがするほどの急カーブを
きってとんでもないところに連れていかれる。
2.5次元ミュージカルを見たことがある友人が「大体合ってる」と言っていたので
私の中で2.5次元の代表作はネロミュになった。
 
 
オープニング映像でメンバーのシルエットが並んだ時に、5人が4人になると
こんなに寂しく感じるものかと驚いた。
「足りない」という感覚。
相席を観る度にこの足りない感覚を引きずることになるのかと、途方に暮れた。

高橋さんの件に触れられると、まだ心を引っ掻かれたような気分になる。
しかし世間の関心は移ろいやすい。
そのうち事件はあまり注目を集めなくなり、まるで犯罪どころか彼の存在や
才能も、最初からなかったかのように忘れられてしまうかもしれない。
自分が確かに心を奪われた素晴らしいものが、人々の記憶から薄らぎ消えてゆく。
それはまた、今味わっているものとは別の種類の辛さだろう。
そしてその辛さを味わうのは、ずいぶんと長い期間になるに違いない。

世間と同じように、私の心も止まったままではいられない。
目の前に現れない人は、どうしたって思い出すことも少なくなる。
そんな自分を薄情に感じて、傷つくこともあるかもしれない
でも、すいているのに相席を見れば必ず思いだす。
素敵だったな、いなくて寂しいな、いつか帰ってきてくれるかな。
だからこの高橋さんの不在に対する気持ちは、しばらく相席に預けておこうかなと思う。

今年の5月にすいているのに相席4が発表されたのが嬉しい。
3の次は4。一歩ずつ一歩ずつ。
そうやって常に次を目指して進んでいくと、気がつけば驚く程遠い場所まで
たどり着いているものだ。
そこに高橋さんもいればいいね。

2016年2月3日水曜日

別役実フェスティバル交流プロジェクトvol.2『別役実を歌う』

20161月に開催された別役実フェスティバルのスペシャルイベント。
別役実作品にまつわる歌を観客にお届するライブ。
歌い踊るはずなのに、舞台上のセットはやはり電柱・バス停・そしてベンチなのだ。
 
第一部は別役さんが書き下ろした音楽劇からの曲が披露される。
そして、演劇集団円が長年子供向けに上演している円こどもステージより
「赤ずきんちゃんの森の狼たちのクリスマス」を、歌と朗読で短く編集して上演した。
これがかわいらしかったなあ。
あの、人の死が無機質に描かれる別役作品なのに、おおかみは赤ずきんちゃんを
コチョコチョくすぐるだけなんだよ!
円の俳優達の演技は当然のように熟練の味わいがあり、とても贅沢な短編劇だった。
 
幕間では別役さんの様子やエピソードが語られる。
一時期容体があまり良くなく、新作中止の報もあったが、現在ではかなり
お元気になられているそうで。
しかし段々良くなるという病気ではないので、現在も療養中のところを
Pカンパニーの林さんが訪れて今回のコンサートに関するお話を伺ってきたとのこと。
 
別役さんに円のこどもステージのために児童劇を書いてほしいと
依頼したのは、岸田今日子さんだった。
なかなか首を縦に振ってくれずに、1年以上かけて説得をした。
僕の物語には教訓がない。教訓のない話は児童劇には向かないのではないか」
というのが断りの理由だったらしい。
そんなこんながありつつも別役さんは児童劇を書き下ろし、独特のユーモアと
優しさを持つ作品は好評で、その後も円への作品提供は続く。
 
やがて、円こどもステージを見た子供がお母さんになり、彼女が子供を
連れて同じ舞台を見に来たと聞いた時は、あの冷静沈着な別役さんも
珍しくとても感動したしたらしい
「めったに感動するような人じゃあないんですよ、いや、そんなことないか()
 
1部の最後には「<不思議の国のアリス>の帽子屋さんのお茶の会」終盤で歌われる
短い歌を、数バージョン続けて歌うコーナーがあった。
この戯曲に歌詞は書かれているが、決まったメロディーはないので、上演する劇団は
自分たちで作曲して上演する。
歌詞は同じなのに別のメロディーで、そのどれもが優しい。
 
第二部は六文銭のライブコンサート。
現在は「六文銭’06」というバンドになっていて、メンバーは小室等さん、
及川恒平さん、四角桂子さん小室ゆいさん(小室等さんの娘さん)。
「スパイものがたり」の劇中歌がメインだった。私は「スパイものがたり」を
見たことがない。
今回聞いて驚いたのが、どれも名曲ばかりなのに、すべての歌の歌詞を聞いても
ストーリーがさっぱりわからなかったこと!
ここまでわからないとかえって面白くなってくる。いつか観に行こう。
ある日スパイがやってきて ある日突然いなくなる はじめとおわりのあるものがたり~
 
小室さんと及川さんも別役さんにまつわる思い出話を語る。
小「彼(及川)は元々流山児祥と芝居をしていたんですよ。よくまぁ別役さんの
ところに行ったね~。流山児に殴られなかった?」(笑)
 
林さんも別役さんから聞いてきた思い出話を伝えてくれる。
1960年代。新宿にその日の上映が全て終わった後に、演劇を上演する
映画館があった。
別役青年も芝居を打ち、脚本はもちろん制作から受付まで全て自分でやっていた。
芝居が始まるのが夜の10時半頃なので、当然終わると終電はもうない。
いつも同じ店で酒も飲めないのに朝の5時までねばり、始発で帰った。
毎日そんな暮らしだった。
 
別役さんは、懐かしそうに及川さんとの初対面を語ったそうで。
彼は最初に会った時、青いベルベットの上着を着た可愛らしい少年坊やだったんだよ」
小室さんとの最初の出会いは覚えていない。でも・・・
「あの頃人は、会うべくして会っていたんだ。」
 
学生運動の熱を帯びていた時代。
才ある若者達が集う場所は時代の交差点で、「貴方に会わせたい人がいる」と紹介があり、
もしくは偶然出会い。
出会うべき人達は出会えるようになっていたのだろう。
小室さんも別役宅で土方巽氏に初めて会ったのだという。
「酒を飲み始めたら土方が『僕は背中に死んだ姉を背負っているんです』とか
言いだしてね。こりゃあえらい所に来ちゃったと思ったよ!」
 
そんな話を聞いているうちに胸が熱くなって、終演後思わず別役実フェスティバル
ポスターを購入してしまった。
これ、部屋に貼るのはちょっと…知らない人が観たら謎のおじいさん写真だよね…。