2016年7月22日金曜日

THE GEESE単独ライブ「トロピカリア」

★ボケの恩返し
お笑いライブの受け具合にご満悦な高佐の家に、怪しげな格好の相方・尾関が現れた。
彼は自分は尾関本人ではなく“尾関のボケ”という概念が具現化した者だと自己紹介する。
ライブでつまらないボケが披露されキンキンに滑りそうな場面で、高佐の絶妙なツッコミに救われた。
いわば高佐は命の恩人。その恩返しのためにやってきたのだという。
絶対に覗かないで下さいね・・・絶対ですよ!と意味深な言葉を残し、別部屋に引き籠って何かを作り始める。
 
全身白タイツ&黒いサンバイザーという衣装が鶴を表していたとは。
恩返しに来たはずなのに高佐さんの持ち物を盗んだり、こっそりビールを飲んだりしてしまうので、たとえ概念であっても性格は同じらしい。
ラストはこっそり部屋を覗いてみると、ボケがゲルニカの一部になっているという謎の結末。
「トロピカリア、スタートです!」
 
★クイズ「ほとんど正解」
司会者(尾関)の出す問題の答えの正解範囲がとんでもなく広く、恐ろしく簡単なものばかりのクイズ番組「クイズ ほとんど正解」。
挑戦者(高佐)は難なく問題をクリアし、優勝賞金一千万獲得まであと少しのところまで進んでいた。
いよいよラスト問題。
「問題。こんな簡単なクイズで、本当に一千万円が貰えるはずはない。○か×か。制限時間は1週間です」
 
あまりにも正解の範囲が広いので、聞いていても「うーん、それが正解で本当にいいのかな?」とモヤモヤする部分があったものの、最後の不穏な落とし方が素晴らしい。
 
★ギャグザップ
トレーニングジムで個人レッスンを受けることにした男(高佐)。
専任トレーナー(尾関)がこのジムのオリジナルメニュー「ギャグザップ」の説明をする。
自分の考えた一発ギャグを披露し、滑ることにより心身に大きな負荷がかかって脂肪燃焼に役立つという画期的なシステムだ。
 
恒例の一発ギャグコーナー。
毎回ギャグを披露するたびに、背後のスクリーンに消費カロリーが出る。
カロリーが高いほど負担が大きかった=滑ったということで、このカロリー数は毎回裏で大竹マネージャーが判定して出していた。
消費カロリー0、つまり大爆笑という表示も一応用意していたものの、結局楽日まで使われることはなかったらしい。
 
★無料の落とし穴
しっかりと教えてくれて、しかも授業料無料の学習塾がある。
そんな信じられない噂を聞き、家庭が裕福ではないためどうしても特待生として大学に進みたい高校生(高佐)が半信半疑で受講してみることにした。
本当に噂通りで、講師(尾関)も教え方が上手く情熱もある。嬉しい驚きと共に授業を受けていると、突然大音量でCM音楽が流れだした。
講師「こんな感覚、初めてだよ!!・・・『パズルフィッシュ』!」
そして次の瞬間、何事もなかったかのように授業を再開する。
実はこの塾は授業料が無料の代わりに広告料で収入を得ており、授業中に一定回数の広告が入る仕組みになっていたのだった。
 
♪バーニラ、バニラ、バーニラ~
おなじみのかっぱ寿司広告もあり。Youtubetwitterを見る時に現れる広告のイライラさを塾にすると、こんなとんでもないことに。
ちなみにこの塾は7万円払うと広告を消すことができる(高い)。
3秒後のスキップもできるけれど、当然のように刻みすぎて授業内容が全く頭に入らない。
パズルフィッシュのナレーションで古関昇悟さん(きたろうさんの息子)と、すいているのに相席でおなじみの山脇唯さんが参加。
 
★特許
出会ってからずっと無職なのに金に不自由をしていない友人(尾関)を不思議に思う男(高佐)。
頼み込んで理由を聞くと、友人は複数の特許を所有しているからだという。
地面に布っぽいものを敷く特許、袖をまくる特許、鼻をかんだティッシュを屑かごに投げ入れる特許。
少額の特許料でも全部合わせればそれなりの値段になる。
「一番儲かるのは何の特許なの?あれ、だんだん暗くなってきた・・」
「この、コントの終わりに段々暗転していい感じに終わる特許だな」
 
これも「クイズ ほとんど正解」と同じく範囲がぼんやりと広くて、見ていてあまりピンとこなかったかな。
収入の秘密を教えて欲しくて駄々をこねる高佐さんがキュート。
 
★ジャンル分け
映画マニアの店主(尾関)が経営するDVDレンタルショップはジャンル分けに独自性がある。
「これはハゲの棚だねー。邦画ハゲと間違えないように注意してー」
「これは“白塗り”だねー。アリスインワンダーランド、シザーハンズ…まぁ、ジョニー・デップだねー」
 
絶妙に気持ち悪いテンションの尾関さんが面白い。
高佐さんが棚のコーナーを探している間に、ちゃんと映画豆知識を入れている。
どのコーナーでも笑いがおこるのに、「AVコーナーの妊婦もの」で会場がスンとするのが何とも。
 
★ダフ屋
不思議な内容の怪しげなチケットを路上で売っているダフ屋(尾関)。
「あんなチケットに需要あるのかな?」
「あるよあるよー・・・需要あるよー」
 
高佐さんはこの「需要あるよー」と答えてくれるところが毎回ツボだったらしい。
私は「あるよー。熱が39℃あるよーフラフラだよー」が好き。
 
★スリル
地域密着型のレストランを経営するオーナー(高佐)は、大手からチェーン展開を打診されているが受けるべきか迷っている。
そこで経営コンサルタントのショーン小林(尾関)に相談をすることにした。
輝かしい経歴と肩書をもつショーンだが、それらはすべて嘘。
経営資料を確認もせずに口から出まかせを話し、資料に自作のポエムを混ぜ込む。
バレたら大惨事だ。しかし彼はそのスリルを楽しんでいる。
ヒリヒリする程のスリルを感じることにより生きているという実感を得る、それがショーンの性癖なのだ。
より大きなスリルを求めるあまり危険な賭けをしすぎて、彼の人生は崩壊へと進んでゆく。
 
ショーン小林のキャラクターが逸品!
スリルを感じれば感じる程興奮する変態的な人物なので、尾関さんのテンションが相当高く、思わず台詞が飛びそうになることも何度か。時事ネタは楽しくて贅沢だな。
 
★ショウほど素敵な商売はない
病院の跡取りである高校生(高佐)は成績も良く、このままならば確実に医学部に進めると担任の教師(尾関)も太鼓判を押す優等生。
しかし、彼は親の敷いたレールの上を進みたくないと言う。
子供の頃からの夢はミュージカルスターになること。だから、高校を卒業したら東京のミュージカル養成所に入りたい。
教師は彼の気持ちに理解を示すが、同時にミュージカルの世界の厳しさを説く。
なぜなら、教師もかつてはミュージカルを目指した過去があるからだった。
 
最後の最後に全部持って行った本格ミュージカルコント。
観終わると、もうこのコントの記憶しか残らないくらいの強烈さだった。
元々はギース・ラバーガール・ジンカーズの3組で開催してるライブ「新ネタ会議」でおろした作品。
その時は、観客の拍手や笑い声で音楽が聞こえなくなるため音にあわせて歌えない、そして歌も笑い声にかき消されてしまうなど問題点が色々とあり、いつか改良して舞台にかけたいと話していた。
 
それを見事にブラッシュアップして、単独のラストを飾るネタにまで練り上げたことに拍手喝采してしまった。
歌声を拾うために舞台にフットマイクを仕込み、尾関さんはミュージカル風の発声方法を習って練習したらしい。
本人曰く、発声方法はオール巨人師匠の「パンパンやで!」と同じで、これを使うと喉に負担がかかりにくい。
確かに朗々として歌声で、何よりあの大きな体躯で歌い踊ると迫力がある。華もある。
そして高佐さんは一度袖に引っ込んで、何やら時間がかかっていると思ったら・・・ピーターパンの衣装を身に纏い、大ジャンプで登場!!
これまた舞台がパーッ!と明るくなるようだった。
 
男女ペアのように腕を組んでステップを踏み、人生は辛いことばかりだけれど、夢と希望があればいつかきっと輝くのだと高らかに歌いあげてポーズを取る二人に、客席から惜しみない拍手が贈られた。
 
安定した収入を得ながら夢を追い続けることは難しい。
特にお笑いの世界は、素人目にも質の良いネタを作りライブで評価される事と、世間に認められて稼ぐ事がリンクしていないように見えて、勝手にやるせない気分になってしまう。
周りに高く評価されていても、歩んできた道のりと残りの人生を考えてこの世界を去る人々がいる。
それを誰が止めることができるというのだろう。
 
だからこそ、舞台の上でまっすぐ夢と希望を歌いあげてくれる二人の姿は輝いていて、そのキラキラしたパワーに元気を貰ってニコニコ顔で帰ってきたのだった。
人生辛いこともあるけれど、素敵な舞台や映画や本があれば、きっと幸せ。