2016年7月22日金曜日

THE GEESE単独ライブ「トロピカリア」

★ボケの恩返し
お笑いライブの受け具合にご満悦な高佐の家に、怪しげな格好の相方・尾関が現れた。
彼は自分は尾関本人ではなく“尾関のボケ”という概念が具現化した者だと自己紹介する。
ライブでつまらないボケが披露されキンキンに滑りそうな場面で、高佐の絶妙なツッコミに救われた。
いわば高佐は命の恩人。その恩返しのためにやってきたのだという。
絶対に覗かないで下さいね・・・絶対ですよ!と意味深な言葉を残し、別部屋に引き籠って何かを作り始める。
 
全身白タイツ&黒いサンバイザーという衣装が鶴を表していたとは。
恩返しに来たはずなのに高佐さんの持ち物を盗んだり、こっそりビールを飲んだりしてしまうので、たとえ概念であっても性格は同じらしい。
ラストはこっそり部屋を覗いてみると、ボケがゲルニカの一部になっているという謎の結末。
「トロピカリア、スタートです!」
 
★クイズ「ほとんど正解」
司会者(尾関)の出す問題の答えの正解範囲がとんでもなく広く、恐ろしく簡単なものばかりのクイズ番組「クイズ ほとんど正解」。
挑戦者(高佐)は難なく問題をクリアし、優勝賞金一千万獲得まであと少しのところまで進んでいた。
いよいよラスト問題。
「問題。こんな簡単なクイズで、本当に一千万円が貰えるはずはない。○か×か。制限時間は1週間です」
 
あまりにも正解の範囲が広いので、聞いていても「うーん、それが正解で本当にいいのかな?」とモヤモヤする部分があったものの、最後の不穏な落とし方が素晴らしい。
 
★ギャグザップ
トレーニングジムで個人レッスンを受けることにした男(高佐)。
専任トレーナー(尾関)がこのジムのオリジナルメニュー「ギャグザップ」の説明をする。
自分の考えた一発ギャグを披露し、滑ることにより心身に大きな負荷がかかって脂肪燃焼に役立つという画期的なシステムだ。
 
恒例の一発ギャグコーナー。
毎回ギャグを披露するたびに、背後のスクリーンに消費カロリーが出る。
カロリーが高いほど負担が大きかった=滑ったということで、このカロリー数は毎回裏で大竹マネージャーが判定して出していた。
消費カロリー0、つまり大爆笑という表示も一応用意していたものの、結局楽日まで使われることはなかったらしい。
 
★無料の落とし穴
しっかりと教えてくれて、しかも授業料無料の学習塾がある。
そんな信じられない噂を聞き、家庭が裕福ではないためどうしても特待生として大学に進みたい高校生(高佐)が半信半疑で受講してみることにした。
本当に噂通りで、講師(尾関)も教え方が上手く情熱もある。嬉しい驚きと共に授業を受けていると、突然大音量でCM音楽が流れだした。
講師「こんな感覚、初めてだよ!!・・・『パズルフィッシュ』!」
そして次の瞬間、何事もなかったかのように授業を再開する。
実はこの塾は授業料が無料の代わりに広告料で収入を得ており、授業中に一定回数の広告が入る仕組みになっていたのだった。
 
♪バーニラ、バニラ、バーニラ~
おなじみのかっぱ寿司広告もあり。Youtubetwitterを見る時に現れる広告のイライラさを塾にすると、こんなとんでもないことに。
ちなみにこの塾は7万円払うと広告を消すことができる(高い)。
3秒後のスキップもできるけれど、当然のように刻みすぎて授業内容が全く頭に入らない。
パズルフィッシュのナレーションで古関昇悟さん(きたろうさんの息子)と、すいているのに相席でおなじみの山脇唯さんが参加。
 
★特許
出会ってからずっと無職なのに金に不自由をしていない友人(尾関)を不思議に思う男(高佐)。
頼み込んで理由を聞くと、友人は複数の特許を所有しているからだという。
地面に布っぽいものを敷く特許、袖をまくる特許、鼻をかんだティッシュを屑かごに投げ入れる特許。
少額の特許料でも全部合わせればそれなりの値段になる。
「一番儲かるのは何の特許なの?あれ、だんだん暗くなってきた・・」
「この、コントの終わりに段々暗転していい感じに終わる特許だな」
 
これも「クイズ ほとんど正解」と同じく範囲がぼんやりと広くて、見ていてあまりピンとこなかったかな。
収入の秘密を教えて欲しくて駄々をこねる高佐さんがキュート。
 
★ジャンル分け
映画マニアの店主(尾関)が経営するDVDレンタルショップはジャンル分けに独自性がある。
「これはハゲの棚だねー。邦画ハゲと間違えないように注意してー」
「これは“白塗り”だねー。アリスインワンダーランド、シザーハンズ…まぁ、ジョニー・デップだねー」
 
絶妙に気持ち悪いテンションの尾関さんが面白い。
高佐さんが棚のコーナーを探している間に、ちゃんと映画豆知識を入れている。
どのコーナーでも笑いがおこるのに、「AVコーナーの妊婦もの」で会場がスンとするのが何とも。
 
★ダフ屋
不思議な内容の怪しげなチケットを路上で売っているダフ屋(尾関)。
「あんなチケットに需要あるのかな?」
「あるよあるよー・・・需要あるよー」
 
高佐さんはこの「需要あるよー」と答えてくれるところが毎回ツボだったらしい。
私は「あるよー。熱が39℃あるよーフラフラだよー」が好き。
 
★スリル
地域密着型のレストランを経営するオーナー(高佐)は、大手からチェーン展開を打診されているが受けるべきか迷っている。
そこで経営コンサルタントのショーン小林(尾関)に相談をすることにした。
輝かしい経歴と肩書をもつショーンだが、それらはすべて嘘。
経営資料を確認もせずに口から出まかせを話し、資料に自作のポエムを混ぜ込む。
バレたら大惨事だ。しかし彼はそのスリルを楽しんでいる。
ヒリヒリする程のスリルを感じることにより生きているという実感を得る、それがショーンの性癖なのだ。
より大きなスリルを求めるあまり危険な賭けをしすぎて、彼の人生は崩壊へと進んでゆく。
 
ショーン小林のキャラクターが逸品!
スリルを感じれば感じる程興奮する変態的な人物なので、尾関さんのテンションが相当高く、思わず台詞が飛びそうになることも何度か。時事ネタは楽しくて贅沢だな。
 
★ショウほど素敵な商売はない
病院の跡取りである高校生(高佐)は成績も良く、このままならば確実に医学部に進めると担任の教師(尾関)も太鼓判を押す優等生。
しかし、彼は親の敷いたレールの上を進みたくないと言う。
子供の頃からの夢はミュージカルスターになること。だから、高校を卒業したら東京のミュージカル養成所に入りたい。
教師は彼の気持ちに理解を示すが、同時にミュージカルの世界の厳しさを説く。
なぜなら、教師もかつてはミュージカルを目指した過去があるからだった。
 
最後の最後に全部持って行った本格ミュージカルコント。
観終わると、もうこのコントの記憶しか残らないくらいの強烈さだった。
元々はギース・ラバーガール・ジンカーズの3組で開催してるライブ「新ネタ会議」でおろした作品。
その時は、観客の拍手や笑い声で音楽が聞こえなくなるため音にあわせて歌えない、そして歌も笑い声にかき消されてしまうなど問題点が色々とあり、いつか改良して舞台にかけたいと話していた。
 
それを見事にブラッシュアップして、単独のラストを飾るネタにまで練り上げたことに拍手喝采してしまった。
歌声を拾うために舞台にフットマイクを仕込み、尾関さんはミュージカル風の発声方法を習って練習したらしい。
本人曰く、発声方法はオール巨人師匠の「パンパンやで!」と同じで、これを使うと喉に負担がかかりにくい。
確かに朗々として歌声で、何よりあの大きな体躯で歌い踊ると迫力がある。華もある。
そして高佐さんは一度袖に引っ込んで、何やら時間がかかっていると思ったら・・・ピーターパンの衣装を身に纏い、大ジャンプで登場!!
これまた舞台がパーッ!と明るくなるようだった。
 
男女ペアのように腕を組んでステップを踏み、人生は辛いことばかりだけれど、夢と希望があればいつかきっと輝くのだと高らかに歌いあげてポーズを取る二人に、客席から惜しみない拍手が贈られた。
 
安定した収入を得ながら夢を追い続けることは難しい。
特にお笑いの世界は、素人目にも質の良いネタを作りライブで評価される事と、世間に認められて稼ぐ事がリンクしていないように見えて、勝手にやるせない気分になってしまう。
周りに高く評価されていても、歩んできた道のりと残りの人生を考えてこの世界を去る人々がいる。
それを誰が止めることができるというのだろう。
 
だからこそ、舞台の上でまっすぐ夢と希望を歌いあげてくれる二人の姿は輝いていて、そのキラキラしたパワーに元気を貰ってニコニコ顔で帰ってきたのだった。
人生辛いこともあるけれど、素敵な舞台や映画や本があれば、きっと幸せ。

2016年6月11日土曜日

すいているのに相席4 反省会(裏)


すいているのに相席の裏話を聞けるとあり、
ファンに大人気のトークライブ「すいているのに相席反省会」。
今回は昼夜に分かれての開催で、とりわけ昼の部が面白かったので
こちらにメモとして残して置くことにした。

昼の部は「裏」、夜の部は「表」という副題がついている。
両方を見比べると「裏」は舞台を支える裏方、「表」は舞台に立つ
演者の意味だったことがわかる。

「裏」の出演者はバッファロー吾郎A、せきしろ、粟村香織、
石川信治(イエスマン)、ザ・ギース高佐。

粟村さんは元・お笑いナタリー編集部で、愛に溢れた
(特にレイザーラモンとスパローズに熱かった!)舞台レポートを
記していたことで、一部お笑いファンに有名な方。

そして石川さんは「犬の心 副音声ライブ」「もしもTHE MANZAI
決勝最後の3組にレイザーラモン、スパローズ、エルシャラカーニの
3組が残ったら」など、最近なんとも面白そうなライブがあると
高い確率で制作に名前のあるイベント会社「イエスマン」の方。

お二人とも元々よしもとに勤めていて、お互いに仕事のできる
頼もしい人という認識があったとのこと。
よしもとを退社後も、もしもTHE MANZAI~や下北沢のお笑い&カレーフェスで
タッグを組み、とても良好な関係で仕事をしている。

ユーモア軍団と仕事でしっかり絡んだのは、下北沢カレーフェスが
初めて・・・と言っていたかな?
せきしろさんやAさんにとっても、楽屋裏までカレーの香りで溢れていたこの
ライブは、まるで高校の文化祭のように楽しかった。

今回の公演は元々イエスマンがイベント内容未定のまま座・高円寺を
2日間おさえていて、すいているのに相席の会場を探しているという
噂を耳にしたので、ここで相席はいかがですか?と提案したらしい。

稽古場の予約、打合せに同席、各セクションへの連絡等と
石川さんの仕事は現場がスムーズに進むための調整全般。
粟村さんは主にパンフレットの作成に関するあれこれ。
せきしろさんもAさんも、石川さんと粟村さんは言わば潤滑油であり、
お二人がいてくれたおかげで稽古や本番に集中することができた、
今回の相席がどんなに進めやすかったことか、本当に助けられたと
何度も繰り返し感謝を述べる。

そんな石川さんの手元には、初期打合せからのやりとりや
誰がどんな提案をしていたかといったメモがびっしりと書かれた
メモがある。
消えてしまったコント案、実は最初は配役が違った登場人物など
興味深い内容も教えてくれるが、大半がAさんのうっかり言った
(良い意味で)しょうもない一言で、「俺、もっとええこと言っとったやろ!」と
ぷんすか怒るAさんであった。

石川さんに大量のメモがあるならば、粟村さんには大量の画像・映像
ストックがある。
特に豊富だったのが、今回のパンフレットの目玉、アイアム野田の
スペシャルグラビアオフショット!
流し眼の野田、浜辺で太陽の光を浴びて輝く野田、とにかくセクシーな野田。
あまりに枚数が多いのでスライドショーにすると、画面の中の野田さんが
ウネウネと動き、会場からワーキャーではない悲鳴があがる。

そもそもこのグラビア企画があがったのは、全員が対談やコラムなど
パンフレットの中でコーナーを担当した中で野田さんだけ何もなく、
本人に希望を聞いたらセクシーなグラビアを撮りたいという要望が
あったから・・・らしい(そんな理由だったはず)

近所の公園でセミヌード写真を撮影して、通報でもされたら洒落に
ならない。さて、どうしようと考えたところ、海ならば脱いでも
問題ないだろうという理由で浜辺での撮影になる。
鬼ヶ島を担当するマネージャーのご実家が海の近くということで、
ロケのためにお借りして素晴らしい写真が撮れた。

こんなに力を入れたグラビアなのに、いざ開幕すると悲劇がおこる。
ポスターはパンフレットに挟みこんであるだけなので、逆さに持つと
床に落ちてしまうのだ。
座・高円寺の床にバサバサと落ち、踏まれそうになっている
セクシー野田ポスター。落とした人も恥ずかしいらしく
粟「ロビーで大声でポスターの落し物があります!と叫んだのですが
3名の方がまだ取りに来ていないんです・・・」

パンフレットでもうひとつ力を入れられていたのが氷河コーナー。
相席が始まる前からネット上で大盛り上がりだった人気キャラ
なので、皆さんの大いなる期待を裏切ったりイメージと違うものに
してはいけない!と粟村さんは大変なプレッシャーを感じていたという。

放課後にアイスクリームを食べる氷河、教室に佇む氷河。
「ほら、これなんか“氷河様が放課後にフリーズストームの練習をして
いらっしゃる”という感じで」
なぜか常に氷河に敬語を絶やさない粟村さん。
ついさっきセクシー野田写真に悲鳴をあげていた客席の女性たちが
おもむろにカメラを取り出し、氷河様オフショットを連写し始めた。

他にも「明星」を意識して、イラストコーナーの名前表記にまで
細かいこだわりを見せるなど、プロの編集技が光る。
そしてアイドル雑誌の裏表紙と言えばCDリリース広告!ということで、
氷河をCDデビューさせる(という設定)ことになった。
そのためにフルネームをみんなで考え、観客は
「氷河は名前じゃなくて名字だったのか・・・!」と衝撃を受けることになる。

さらにオフショットを披露してくれたのは、パンフレットに
掲載されていたニセ稽古場風景。
これは実際の稽古を撮影したのではなく、わざわざ劇団の稽古風に
それっぽい動きや演出をして撮影したもので、その写真の全てに
せきしろさんがコメントをつけた。
粟村さんは、ぴったりのコメントがすぐに届いたので驚いたそうだ。

舞台を助けてくれるスタッフは他にもたくさん。
今回は照明の方から、コントの内容を理解した上で照明プランの
提案があり、それがとても嬉しかった。

また、ものまね王座決定戦のコントは山脇さんが全身タイツを
着る役だったので、女性スタッフが「山脇さんは女性なので身体のラインが
あまり出ないように、タイツの上から何か履いていただいた方が
いいんじゃないですか?」とアドバイスをくれた。
男性である自分たちには全くない発想で、そこに気を回さなければ
ならなかったことにまるで気がつかず
「そういうのわからん!俺らぜんっっぜんわからん!」と
力説をするAさん。

このものまね王座決定戦のコントは、以前にこやつタイムさんの
単独で披露されたネタ。
今回の相席にはこやつさんも見に来てくれて、終演後に黒衣が動かす
蝶はもっとひらひらとする方が良いからと、舞台裏であっという間に
小道具を改良してくれたのだという。

さらに、忘れてはいけない裏方はネイキッドロフトの店長。
相席ファンである店長を筆頭に、お店のスタッフはみんな
相席Tシャツ&SAKONTシャツを着用!
毎回楽しみな限定メニューも一部は店長が考えているそうで、
今回の「半人前のたぬきそば」は、こどものたぬきがまだ
半人前なことと、食べやすいハーフサイズの蕎麦で
あることが上手にかかっている素敵なネーミングだった。

一応、脚本としての裏話もしておこうかな、ということで
せきしろさんは相席の初期コント表(案)を見せてくれた。
最終的な内容と比べると、順番が入れ替わっていたり、なくなって
しまったコントがあったりと大分変っている。

印象深かったのは、一通り揃ったコントを並べてみると、TVや
芸能に関するパロディものがほとんどなく、相席ではパロディ要素を
期待されている部分が大きいので、いくつかのコントはボツに
したという話だった。
どんな内容かを少しだけ教えてくれて、それがとても面白そうな
設定だったので、いつかの相席で披露されるのを楽しみにしたい。

2016年3月30日水曜日

円山スクランブルエッグス第二回「円山町再起動」

<オープニング>
修理課で古い人形の周りに男達(全員)が集まっている。
一見ダッチワイフのようなこの人形はすでに古く、数々の記憶がごっちゃになり故障して
しまったらしい。半ば諦めつつもなんとか直そうと、人形に何度目かの再起動をかけてみる。
 
<授業参観>
中学校の授業参観日に騒ぐ男子生徒3人(槙尾、森田、溜口)。
授業が始まるとクラスにいるはずのない黒人の両親(う大、塚本)がやってきた。
 
塚本さんが案外可愛く見えると話題に。
本人も「黒人女性の役は俺の欠点を全部隠して長所を際立たせる!」と強調。
 
<上京>
卒業後、過疎化した小さな村から東京に行くことを決めた高校生(溜口)。
みんなでずっと同じ村で暮らそうと約束していた親友(東口)は納得がいかない。
理由を説明しろと詰め寄ると
「俺はホモなんだ。でもこの村には他にホモがいない。だから東京にいくの」
 
<クラブ>
渋谷のクラブで踊る男達(東口、森田、溜口、塚本)。音
楽がアガりストロボが焚かれると突然白い服を着た謎の女(槙尾)が現れ、森田を影に
引きずり込む。彼女の魔の手は東口がナンパした女(う大)にも及び、フロアからだんだん
人がいなくなる。
 
頭を振りすぎて槙尾さんのウィッグが取れた!!
槙尾さんは美人の女性でやりたがったが、そういう役ではないからと皆に止められる。
溜口さんと森田さんはひそかに毎回ダンス対決をしていた。
 
<UFO>
500円くれればUFOを呼ぶという怪しげな男(う大)に連れられて、
山の上までやってきた塚本。値段を吊り上げながらもどんどんUFOを呼び、
塚本は夢中でその様子を撮影する。呼ばれたUFOは長い時間留まりすぎると「侵略」という
概念が生まれてしまうらしい。
 
う大さんが演じる男が「人間の肝は金庫にしまってあるので渡せません」と言うのは、
猿の生き胆という昔話を元にしているそうで。
この昔話の話を延々とアフタートークで語ってみんなにうんざりされる(笑)。
 
<女刑事たち>
殺人容疑の女(溜口)の取り調べが行われている一室。
母親が警視総監のキャリア、刑事長、署長、叩き上げの刑事。
すべて女性だ。彼女達が口論していると、殺人現場から見たことのない形の金色の
オブジェが見つかる。
 
最初にこのコントを見た時は設定がうまく飲み込めず、アフタートークで
「女しかいない世界」だと聞いて納得。
あえてちゃんとした女装はせず、全員ウィッグだけかぶって演じていたのに、初日に
槙尾さんがこっそり胸を入れてチークまでしていたことが発覚して責められる。
「『槙尾さんだけなぜか本当の女性に見えました~』と言われることを狙っている」
という、う大さんの指摘が鋭い。
 
<産まない自由>
5年間妊娠したままで大きなお腹を抱えている妻(槙尾)と、いい加減
うんざりしている夫(森田)。
妻はこのままずっとお腹で子供を育てるつもりらしい。妊娠15年目の先輩妊婦(溜口)や
その家族(う大、東口)がやってきて騒いでいると、ついに陣痛がやってきて
5歳の息子(塚本)が産まれる。
 
塚本さんの怪演パート1。
このコントは最後のシーンがとても心に残っている。
お腹で育てるつもりだったのにうっかり5歳で産まれてしまった、親にチョンボ
呼ばわりされている東口さん演じる男の子が、誕生したばかりの塚本さんに優しく
抱きとめて「だーいじょうぶ」と言ってあげる。その優しさ。
親の思惑など関係なく、生まれてくる子供はみんな大事な子。
 
<メンヘラ>
スナックのママが自分に冷たいことを嘆いて精神安定剤を飲み過ぎ、リストカットを
繰り返し、Coccoを聴きすぎる老人(槙尾)。
毎日のように電話がかかるので心配して家に来てくれる友人(森田)もついに切れる。
「この、メンヘラ~~~~~~~~~!!!!!!!」
 
森田さんが生き生きとしていた!自作のコントなのかな?
 
<神社のカミさん>
友人(溜口)に呼び出され、久しぶりに東京から故郷の村に戻ってきた男(森田)。
この村の少年たち15歳になると神社で「カミさん」と呼ばれる人形と
交わる風習があった。
しかしカミさんに嵌りすぎてしまった男たちは常軌を逸してゆき・・・
 
今回の問題作。塚本さんの怪演パート2。
溜口さんの俳優然とした演技が素晴らしい。
 
オリジナリティと高い演技力を併せ持つ3組によるユニットコントライブの第二回。
かもめんたるの奇妙さ、ラブレターズの毒、さらば青春の光の下世話さ。
第一回公演では3組の特徴がうまく調和して、それぞれの単独よりも
口ざわりが良く、私は正直今回よりも前回の方が楽しめたかもしれない。
各コントをまとめる大元の話(人形について)が、わかりにくいというか
消化不良気味・・・。
その「わからなさ」を覆すだけのカタルシスも、ラストシーンでは得られなかったので。
直接的に下品な表現が沢山出てきて、そこも少々苦手だった。
 
でも、最後のコントの印象があまりにも強く全体的に下ネタのイメージだったが、
思い返してみると他のコントはそこまでシモがかってはいなかったように思う。
黒人、ゲイコントなどを差別ネタだと捕えた人もいるかもしれない。
そこも気にするほど激しくはなかったし、私はそもそもコントで差異を
描いてはいけないとは思わない。
どんな種類のどんな立場の人も等しく笑い飛ばすことが、笑いの持つ公平性だから。
 
視覚的に面白く客席も沸いていた「クラブ」、女のステレオタイプを突きつけられる
「女刑事たち」、槙尾さんとウジウジした演技と森田さんの魂からの
ツッコミを堪能できる「メンヘラ」が今回のお気に入りコント。
 
チケットの売れ行きが悪く急遽アフタートークが追加されたため、稽古の裏話も
色々と聞くことができた。
今回は「コンビ外の2人で組むコント」と「全員出演コント」で作ったそうで、
相方ではない相手と組むことになった2人に関しては色々とエピソードがあったらしい。
 
印象的だったのは、槙尾さんが稽古をしたいのに相手役だった森田さんが
あまり付き合ってくれないために溜口さんと練習していた話。
溜口さん曰く、槙尾さんは最初の演技プランが何もない。真っ白。
しかしこういう風にやるといいのでは、とアドバイスするとすぐにできる!
溜「もう、う大さんに完璧に調教されてるんだと思って。」
「操り人形。う大の中のマリオネット!」
それをニヤニヤ笑いながら聴いているう大さんが怖かった・・・。
槙尾さんは、溜口さんは演技指導の上手な家庭教師のようだったと話していた。
 
う大&塚本ペアに関しては、とにかくう大さんがわけわからない!と困る塚本さん。
稽古の時は尺が短いコントだったのに、本番は15分くらいに延びている。
台詞はどんどん変わっていくし、変な台詞を言った後でこちらの様子を
伺うようにニヤニヤしながら眺めている。
 
そして、とにかく心を開かない東口さん問題(笑)
本人は打ち解けようと努力していると主張するが、無口で塚本さんとしか
楽しそうに会話をしないし、皆でご飯を食べようとしても気がつくとどこかに消えてしまう。
今回は相手役である溜口さんが、ビクビク怯えながら東口さんの欠点を
話してバシバシ頭を殴られていた。
森田さんが「でも、東口は今回すごく練習してたよ。単独よりやってた。
多分溜口に恥かかせちゃいけないと思ったんだろう」と擁護してくれていて、
相方さんだな~とホッコリ。

2016年2月23日火曜日

すいているのに相席3.5

★野球へ行くつもりじゃなかった
「磯野、野球やろうぜ~!」
中島(尾関)が何度呼びかけてもカツオ(野田)は家から出てこない。
中島は徐々に苛立ち始め、カツオを家から出すために執拗な作戦を立てはじめる。
 
今回少々遅刻をしてルミネに入ると、舞台上で中島が契約書を読み上げながら
カツオを脅して磯野家に突入しようとしていた。
ヨネスケの亜種だ。恐ろしい。
 
★殺陣師左近3.5
189cmの大男を芦田愛菜だと思い込み、独自に作成したCDショップリスト
(口裂け女はCDショップを恐れるから)をくれる狂気の殺陣師左近先生。
三度、あらわる。
 
お騒がせの不倫騒動について、ピザハットに苦情の電話を入れている。
「ベッキーって何だ?!私はね、うつみ宮土理のことを言っているんですよ!!」
2016年にキンキンケロンパの不倫について熱く怒るのは左近先生だけ。
今回は左近先生が繰り返し語るエピソードに登場する越前蟹狂四郎先生(野田)が登場。
台詞は「左近、これは殺陣(縦)じゃなくて横だな」のみ。
 
★魔王
東京フレンドパークのスタジオ観覧に当選した親子。
楽しみにしている父親(尾関)の横で、息子(高佐)は具合が悪そうだ。
熱にうなされて幻想を見る息子とそれをなだめる父親。
シューベルト「魔王」と東京フレンドパークの奇跡の融合コント。
 
息子の演技がマイナーチェンジしていて素敵。
父親に訴える姿はオーバーアクションで、幻想にうなされ茫然とした様子は
暗闇を見つめながらゆっくりと。
父親(尾関)のバリトンボイスもよく響く。
しかし、この暗闇の向こうで為ちゃんがウォールクラッシュに駆け登り、ベース音を
頼りにドラムを叩いているのだ。
想像すると、シュールさも倍増である。
 
★雷
いつもくだを巻いている赤(亘)・緑(野田)・黒(バ吾)の雷様。
今日も今日とてとりとめのない会話をしていると、そこに一陣の風が吹く。
現れたのは、雲の上にいるという伝説の雷様を求めてやってきたシータ(山脇)と
パズー(高佐)だった。
 
緑の雷様が尾関→野田という変更になり、高木ブ―らしさが10あがった!
何度聞いてもAさんのいかりや長介ものまねは絶品。
いつまでも聴いていたい。
 
★声
敵に見つからないように行動する三人。
その中の一人がいっこく堂(尾関)であったことによりおこる悲劇。
あの時声が遅れなければ、仲間を助けることができたのに。
 
三人目の名前が出るところでさざ波のように笑いがおこるのが堪らない。
元自衛官だった亘さんによる本格的なガンアクション。
 
★美輪さんとかくれんぼ
美輪さんとかくれんぼをして遊ぶ学生服姿の青年(野田)。
姿を消してしまった美輪さんの代わりに見つけた綺麗な花は、彼女と同じ
美しい黄色だった。
 
すいているのに相席では高佐さんが、観ているこちらの背中がモゾモゾしそうな
昭和的耽美青年を演じていたこのコント。
オリジナルは野田さんのピンネタだという。
えっ、あの鬼ヶ島の野田さん?全然想像がつかない!
そう思っていたら、なんと今回の相席3.5では原点回帰の野田バージョン。
これがもう、なんというか、絶妙なキャラ造形だった。
見た目の気持ち悪さを野田さんの持ち前の愛嬌で完璧にカバーしている。
きもかわいい、ともまた違う。
 
★あいせきみんなのうた  ギザギザハートの子守唄
藤井フマナイヤ(バ吾A)の適当替え歌でお届け。
 
そろそろフルで一緒に歌えるかもしれない。
 
★恵方巻き
節分の日に、恵方巻きを食べながら窓から妻(山脇)の浮気を
目撃してしまった男(尾関)。
「やめろ!と叫びたかったが・・・福が逃げてしまうのでやめた」
 
スーツで帰ってきた旦那さんが、部屋着に着替えるあたりが細かい。
今年の方角は南南東で、山脇さんは言い間違えないように何度も練習していたらしい。
 
★こどものタヌキ
もはやこどものタヌキはすいているのに相席の通過儀礼。
今回のタヌキ枠は亘さん。
 
J-WALK
J-WALK(尾関)のコンサートにやってきたカップル(バ吾A、山脇)。
ヒット曲「何もいえなくて…夏」を楽しんでいるうちにおかしな事に気づく。
何度も何度も繰り返す同じメロディ。歌がループしている。
「俺達はJ-WALKに囚われてしまったのかもしれない」
このままでは夏が終わらない。会場で見つけたJ-WALKリーパー達と共に
J-WALKから脱出する方法はあるのだろうか。
 
上田さんの書く奇妙なコントがとても好きだ。
最初、このままJ-WALKを延々と眺めるだけのコントだったどうしようと不安になるほど
長く曲を聞かせて、途中から一気に空間がぐにゃりとねじ曲がる。
熱狂する会場の中で見つけたJ-WALKリーパーは、J-WALKに囚われて5日目のサラリーマン(亘)と、
もう10年以上もいる老人(野田)。
殺陣師左近に出てきた越前蟹狂四郎といい、野田さんの演じるキャラクターの強さに圧倒される。
どんな物語の流れの中でも、彼が出てくるだけで否応なしに「お笑い」に
持っていくことができる。その強烈さと力強さ。
 
 
★毒蝮三太夫のミュージックプレゼント最終回
本日が大沢悠里のゆうゆうワイド 毒蝮三太夫コーナー最終回ということで
相変わらず毒舌の毒蝮(バ吾A)。
応援にきてくれた老人達(高佐、山脇)を追い払うと、物陰に鋭い目線を投げつける。
そこに現れたのは、巣鴨に完成させた魔界と人間界を繋ぐ道から魔族を送りこみ
世界を滅ぼそうと企む魔物(尾関)だった。
かつての親友・立川談志の仇でもある魔物と激しい戦いを繰り広げる毒蝮。
しかしあまりにも強大な敵の力に、もはやこれまでと諦めた彼の耳に音楽が届く
♪大沢悠里の~ゆうゆうワイド~
老人達の愛と歌の力が、魔物を追い詰める・・・!
 
ゆうゆうワイドが終了するという報のあった時期にこのコントが入ったのは、
偶然だったのか意図的なものかはわからない。
しかし、終わるとわかって観てみると老人の歌うゆうゆうワイドジングルに、妙に
グッとくるものがある。
コントの中でまむちゃんは世界を救ったけれど、実際にこのラジオは多くの人々の生活を
時計のように支えて、ある意味“守って”くれたのではないだろうか。
 
★モノボケ部
世界大会に向けてモノボケの特訓をしているモノボケ部部長(バ吾A)。
愉快な部員(野田)やかわいいマネージャー(山脇)といつものようにふざけていると、
突然手下(亘)を連れた、見慣れぬ青い髪の青年(高佐)が現れる。
氷河と名乗る彼は自らを「モノボケ四天王の一人」だと告げ、部長にモノボケ対決を挑む。
馬鹿にされて向かってきた部員を、一瞬で氷漬けにする氷河。
彼は氷を操る能力の持ち主なのだ。
敵いっこないとマネージャーに止められるも、部長は持ち前の知恵と勇気で氷河に立ち向かう。
 
炎を操る刺客があらわれた「大喜利部」のパラレルワールドになっているコント。
とりあえずファンの間では、氷河様の人気が急上昇だった(笑)
いかにも漫画で愉快だなあ。ザ・主人公のAさんもかっこいい。
ここでも野田さんが良いスパイス役だった。
 
★ボウリング
完璧なフォームでボウリングをする男(野田)。
ボウリングの球だと思った物は春キャベツだった。
VEGETABLE
 
Aさんのライブで披露した時にやや滑りしたギャグ「春キャベツボウリング」。
憤慨してこのギャグは野田にやらせる!と言っていたけれど、まさか本当に
相席でやるとは。
映像をわざわざ作ったり、演出がAさん&せきしろさんの二人がかりだったりと
意外と贅沢だったコント。
 
★天使
<ベルギー・フランダース地方に絵を描くのが得意な少年ネロ(高佐)と祖父ジェハン(亘)が、
貧しいながらも周りの人々に助けられながら暮らしていた。
金物屋に酷使され捨てられた犬パトラッシュ(バ吾A)を拾い、一緒に暮らすようになるネロ。
しかし祖父が過労で亡くなり、孤児となった貧しいネロに世間は冷たかった。>
願いだった絵のコンクールにも落選したネロは、パトラッシュと共に訪れた
教会のルーベンスの絵の前で天使の音楽を聞く…このまま天に召されてもいい…
♪ギュィイイイイイイイーン
「ギターの音?天使の音楽じゃない。アルフィ―高見沢さんのギターの音だ!」
 
突然始まる「星空のディスタンス」。激しく歌い踊るネロとパトラッシュ。
舞台袖からコゼツ(尾関)、アロア(山脇)、村人(野田)も手拍子をしながら現れる。
ネロ「みんな、今日はフランダースの犬ミュージカル『フラミュ』に来てくれて
ありがとう~~~!!!」
 
忠実な世界名作劇場パロディが始まったので、最後のコントだからここから
感動的なストーリーになるのかと思っていたら、目まいがするほどの急カーブを
きってとんでもないところに連れていかれる。
2.5次元ミュージカルを見たことがある友人が「大体合ってる」と言っていたので
私の中で2.5次元の代表作はネロミュになった。
 
 
オープニング映像でメンバーのシルエットが並んだ時に、5人が4人になると
こんなに寂しく感じるものかと驚いた。
「足りない」という感覚。
相席を観る度にこの足りない感覚を引きずることになるのかと、途方に暮れた。

高橋さんの件に触れられると、まだ心を引っ掻かれたような気分になる。
しかし世間の関心は移ろいやすい。
そのうち事件はあまり注目を集めなくなり、まるで犯罪どころか彼の存在や
才能も、最初からなかったかのように忘れられてしまうかもしれない。
自分が確かに心を奪われた素晴らしいものが、人々の記憶から薄らぎ消えてゆく。
それはまた、今味わっているものとは別の種類の辛さだろう。
そしてその辛さを味わうのは、ずいぶんと長い期間になるに違いない。

世間と同じように、私の心も止まったままではいられない。
目の前に現れない人は、どうしたって思い出すことも少なくなる。
そんな自分を薄情に感じて、傷つくこともあるかもしれない
でも、すいているのに相席を見れば必ず思いだす。
素敵だったな、いなくて寂しいな、いつか帰ってきてくれるかな。
だからこの高橋さんの不在に対する気持ちは、しばらく相席に預けておこうかなと思う。

今年の5月にすいているのに相席4が発表されたのが嬉しい。
3の次は4。一歩ずつ一歩ずつ。
そうやって常に次を目指して進んでいくと、気がつけば驚く程遠い場所まで
たどり着いているものだ。
そこに高橋さんもいればいいね。