2016年3月30日水曜日

円山スクランブルエッグス第二回「円山町再起動」

<オープニング>
修理課で古い人形の周りに男達(全員)が集まっている。
一見ダッチワイフのようなこの人形はすでに古く、数々の記憶がごっちゃになり故障して
しまったらしい。半ば諦めつつもなんとか直そうと、人形に何度目かの再起動をかけてみる。
 
<授業参観>
中学校の授業参観日に騒ぐ男子生徒3人(槙尾、森田、溜口)。
授業が始まるとクラスにいるはずのない黒人の両親(う大、塚本)がやってきた。
 
塚本さんが案外可愛く見えると話題に。
本人も「黒人女性の役は俺の欠点を全部隠して長所を際立たせる!」と強調。
 
<上京>
卒業後、過疎化した小さな村から東京に行くことを決めた高校生(溜口)。
みんなでずっと同じ村で暮らそうと約束していた親友(東口)は納得がいかない。
理由を説明しろと詰め寄ると
「俺はホモなんだ。でもこの村には他にホモがいない。だから東京にいくの」
 
<クラブ>
渋谷のクラブで踊る男達(東口、森田、溜口、塚本)。音
楽がアガりストロボが焚かれると突然白い服を着た謎の女(槙尾)が現れ、森田を影に
引きずり込む。彼女の魔の手は東口がナンパした女(う大)にも及び、フロアからだんだん
人がいなくなる。
 
頭を振りすぎて槙尾さんのウィッグが取れた!!
槙尾さんは美人の女性でやりたがったが、そういう役ではないからと皆に止められる。
溜口さんと森田さんはひそかに毎回ダンス対決をしていた。
 
<UFO>
500円くれればUFOを呼ぶという怪しげな男(う大)に連れられて、
山の上までやってきた塚本。値段を吊り上げながらもどんどんUFOを呼び、
塚本は夢中でその様子を撮影する。呼ばれたUFOは長い時間留まりすぎると「侵略」という
概念が生まれてしまうらしい。
 
う大さんが演じる男が「人間の肝は金庫にしまってあるので渡せません」と言うのは、
猿の生き胆という昔話を元にしているそうで。
この昔話の話を延々とアフタートークで語ってみんなにうんざりされる(笑)。
 
<女刑事たち>
殺人容疑の女(溜口)の取り調べが行われている一室。
母親が警視総監のキャリア、刑事長、署長、叩き上げの刑事。
すべて女性だ。彼女達が口論していると、殺人現場から見たことのない形の金色の
オブジェが見つかる。
 
最初にこのコントを見た時は設定がうまく飲み込めず、アフタートークで
「女しかいない世界」だと聞いて納得。
あえてちゃんとした女装はせず、全員ウィッグだけかぶって演じていたのに、初日に
槙尾さんがこっそり胸を入れてチークまでしていたことが発覚して責められる。
「『槙尾さんだけなぜか本当の女性に見えました~』と言われることを狙っている」
という、う大さんの指摘が鋭い。
 
<産まない自由>
5年間妊娠したままで大きなお腹を抱えている妻(槙尾)と、いい加減
うんざりしている夫(森田)。
妻はこのままずっとお腹で子供を育てるつもりらしい。妊娠15年目の先輩妊婦(溜口)や
その家族(う大、東口)がやってきて騒いでいると、ついに陣痛がやってきて
5歳の息子(塚本)が産まれる。
 
塚本さんの怪演パート1。
このコントは最後のシーンがとても心に残っている。
お腹で育てるつもりだったのにうっかり5歳で産まれてしまった、親にチョンボ
呼ばわりされている東口さん演じる男の子が、誕生したばかりの塚本さんに優しく
抱きとめて「だーいじょうぶ」と言ってあげる。その優しさ。
親の思惑など関係なく、生まれてくる子供はみんな大事な子。
 
<メンヘラ>
スナックのママが自分に冷たいことを嘆いて精神安定剤を飲み過ぎ、リストカットを
繰り返し、Coccoを聴きすぎる老人(槙尾)。
毎日のように電話がかかるので心配して家に来てくれる友人(森田)もついに切れる。
「この、メンヘラ~~~~~~~~~!!!!!!!」
 
森田さんが生き生きとしていた!自作のコントなのかな?
 
<神社のカミさん>
友人(溜口)に呼び出され、久しぶりに東京から故郷の村に戻ってきた男(森田)。
この村の少年たち15歳になると神社で「カミさん」と呼ばれる人形と
交わる風習があった。
しかしカミさんに嵌りすぎてしまった男たちは常軌を逸してゆき・・・
 
今回の問題作。塚本さんの怪演パート2。
溜口さんの俳優然とした演技が素晴らしい。
 
オリジナリティと高い演技力を併せ持つ3組によるユニットコントライブの第二回。
かもめんたるの奇妙さ、ラブレターズの毒、さらば青春の光の下世話さ。
第一回公演では3組の特徴がうまく調和して、それぞれの単独よりも
口ざわりが良く、私は正直今回よりも前回の方が楽しめたかもしれない。
各コントをまとめる大元の話(人形について)が、わかりにくいというか
消化不良気味・・・。
その「わからなさ」を覆すだけのカタルシスも、ラストシーンでは得られなかったので。
直接的に下品な表現が沢山出てきて、そこも少々苦手だった。
 
でも、最後のコントの印象があまりにも強く全体的に下ネタのイメージだったが、
思い返してみると他のコントはそこまでシモがかってはいなかったように思う。
黒人、ゲイコントなどを差別ネタだと捕えた人もいるかもしれない。
そこも気にするほど激しくはなかったし、私はそもそもコントで差異を
描いてはいけないとは思わない。
どんな種類のどんな立場の人も等しく笑い飛ばすことが、笑いの持つ公平性だから。
 
視覚的に面白く客席も沸いていた「クラブ」、女のステレオタイプを突きつけられる
「女刑事たち」、槙尾さんとウジウジした演技と森田さんの魂からの
ツッコミを堪能できる「メンヘラ」が今回のお気に入りコント。
 
チケットの売れ行きが悪く急遽アフタートークが追加されたため、稽古の裏話も
色々と聞くことができた。
今回は「コンビ外の2人で組むコント」と「全員出演コント」で作ったそうで、
相方ではない相手と組むことになった2人に関しては色々とエピソードがあったらしい。
 
印象的だったのは、槙尾さんが稽古をしたいのに相手役だった森田さんが
あまり付き合ってくれないために溜口さんと練習していた話。
溜口さん曰く、槙尾さんは最初の演技プランが何もない。真っ白。
しかしこういう風にやるといいのでは、とアドバイスするとすぐにできる!
溜「もう、う大さんに完璧に調教されてるんだと思って。」
「操り人形。う大の中のマリオネット!」
それをニヤニヤ笑いながら聴いているう大さんが怖かった・・・。
槙尾さんは、溜口さんは演技指導の上手な家庭教師のようだったと話していた。
 
う大&塚本ペアに関しては、とにかくう大さんがわけわからない!と困る塚本さん。
稽古の時は尺が短いコントだったのに、本番は15分くらいに延びている。
台詞はどんどん変わっていくし、変な台詞を言った後でこちらの様子を
伺うようにニヤニヤしながら眺めている。
 
そして、とにかく心を開かない東口さん問題(笑)
本人は打ち解けようと努力していると主張するが、無口で塚本さんとしか
楽しそうに会話をしないし、皆でご飯を食べようとしても気がつくとどこかに消えてしまう。
今回は相手役である溜口さんが、ビクビク怯えながら東口さんの欠点を
話してバシバシ頭を殴られていた。
森田さんが「でも、東口は今回すごく練習してたよ。単独よりやってた。
多分溜口に恥かかせちゃいけないと思ったんだろう」と擁護してくれていて、
相方さんだな~とホッコリ。