2018年2月8日木曜日

新国立劇場ポスター展「イメージの記憶」

今年は新国立劇場開館20周年。
その記念として、2階3階のギャラリーで歴代のポスター展が開催されている。

 以前ブログに書いたかもしれないが、私は開館当初の新国立劇場
ポスター(チラシ)が大好きだった。
とりわけバレエ・オペラが素晴らしく、くるみ割り人形ならば人形を胸に抱き
夢見るような表情のクララのイラスト。
キトリの優雅なセンスに薔薇をあしらったドンキホーテ。
桜の舞い散る中、大きく羽を広げた蝶をモチーフにした蝶々夫人。
しかし当時通っていた小劇場の折込みには、新国立劇場のチラシ
(特にバレエ、オペラ)は入らないので、わざわざ劇場までチラシを貰いに
行っていた。

それくらい好きだったあのポスターに会える!と、芸術監督トークショーが
終わったその足でギャラリーへ。
ああ、今見ても美しい。ウットリと眺めながら、その美しさの理由を確信した。
イラストだからだ。写真を使っていないからだ。

コンサート、オペラ、バレエを見に行くと、入口で分厚い他公演のチラシ束を
渡される。
そのチラシのほとんどは、大きく書かれた公演名と写真が印刷されている。
クラシックコンサートならばホールで演奏する楽団の全体写真に、指揮者の
姿がドーン!
オペラやバレエならば、ソリストの舞台写真がバーン!
失礼を承知で書くならば、宣伝美術としての美しさは欠片もない。

しかし、何故そうなってしまうかもわかる。
前述のトークショーでも出ていた、集客問題があるからだろう。
コンサート、オペラ、バレエは演劇以上に「ソリスト(あるいは指揮者)が誰なのか」
が重要であり、観客もそこを目当てでどの公演に行くか選ぶ場合が多い。
となると、いかにその情報を目立たせるかという点が最重要で、結果として
定型文のような凡庸なチラシになってしまう。

国立の劇場ならば、他公演のように集客に重くとらわれずに企画をたてる
ことができる。作品で人を呼ぼう。
高い志を持った誰かが開館当初はいて、この美しいポスターを制作したのかも
しれない。

そんな想像をしながら、たっぷりと時間をかけてポスター達を眺めた。

http://www.nntt.jac.go.jp/centre/news/detail/180112_011688.html