2020年1月9日木曜日

2019年のシティボーイズコント(ASH&Dライブ)

2019年に久しぶりのASH&Dライブが開催された。

ギース高佐さんと大竹マネージャーによる、お洒落でスタイリッシュなピアノ演奏によるオープニング。
ザ・ギース、ラブレターズ、阿佐ヶ谷姉妹のコント。
斉木さんと久本明子さんによるネタ。
古関昇悟さん自作の人形で、実際に同居している大きな人形「桑野さん」と夙川アトムさんの奇妙なトリオコント。
去年ASH&Dに所属した田本清嵐さんの歌いながらトランプタワーチャレンジ。

そんな中できたろうさん&ムロツヨシコンビのコントと、シティボーイズの新作コントについて書き残しておきたいなと思う。

・オヤジさん

暴力団組長(きたろう)が刑期を終え、20年ぶりにシャバへ戻ってきた。
出迎えたのは後を任せた組の舎弟(ムロツヨシ)たった一人。
今は反社会的勢力への圧力が大きい。
迎えに来たのが一人なだけで、組員も増えて組は安泰だという。
最近は良いシノギを見つけて儲けもある。

「まさかヤクじゃねえだろうな!」
「水素水です」
「・・・なんだそれは」
「なーーんか、健康にいい水、です」

浦島太郎気分を味わいたいので、ムショにいる20年間は完全に情報を遮断していた組長。
この20年間に世間では何があったのかを尋ねる。

「そうですね。笑っていいともが終わりました」
「ええっ、いいともが?」
「その後にバイキングという番組が始まって坂○忍が再ブレイクです」
「○上忍って元子役だろ?そんな奴がなんで再ブレイクするんだよ!」
「みんなそう思ってますよ!」

初めて見るスマホに未来を感じ、煙草代わりのiQOSを吸う。
Instagramへのいいね(口頭で)。
浦島気分は楽しんだものの、組長はもう組に戻るつもりはないのだと明かす。
足を洗ってカタギになり、待たせている女のもとへ行く。
バスで行こうとするのを舎弟は車で送り届けようとするが、猛烈に恥ずかしがってジタバタする組長。

「アレをやっちゃったんだよ。幸せの黄色いハンカチ。俺を待っていてくれたら黄色いハンカチを・・・・ってやつ」
「小さな高倉健になりたかっただけなんだよーーー!」

約束の場所に着くと、一面に干された黄色いハンカチーフと嬉しそうな彼女(女装の大竹さん)の姿が!


最後の彼女を誰が演じるかという話し合いで、阿佐ヶ谷姉妹や尾関さん(でっかいね!)も候補にあがったらしい。
舞台セットはバス停だけ。
もっときたろうさんが好き放題にかき回すのかと思いきや、彼らしい味のある演技とユーモアを存分にちりばめた、しっかりとした良質な二人の掛け合いコントだった。
そんなきたろうさんをフォローしたり、翻弄されたりするムロさんもさすがに上手い。
テンポが抜群!

・赤ん坊待ち

昼夜公演で私が見たのは夜の回のみ。
昼は斉木さんが台詞を大きく飛ばすすったもんだがあったようだが、夜の公演はほぼ完璧だったのではないだろうか。
シティボーイズは作家により作風は変わるが、コントの中の人物に役名がしっかりつけられている場合が多い。
しかし今回はお互いの名前を呼び合うシーンがなかった。
役名がないことで、脚本上の架空の人物でありながら70代の彼ら自身のようでもあり、これがとても良かった。

以下は大体のストーリー。
何しろ役名がないので、シティボーイズ3人の名前をそのまま使って書くことにする。

舞台はきたろうの家。

 「本当に申し訳ない」と頭を下げるきたろうに、大竹と斉木がぶつぶつと文句を言っている。
初孫が産まれたから見に来いと言われてきたのに、肝心の孫が家にいない。
どうやら検診のために両親と出かけているらしい。
き「30分か1時間くらいで戻るから」
大「30分なのか1時間なのか。どっちなんだ?!」
き「じゃあ45分」

まさかお前たちに孫を見せることになるとはなあ、と感慨深げなきたろう。
大竹と斉木がご祝儀を渡すと、大げさに驚いて見せてから受け取る。
このご祝儀、斉木は大竹に中身を借りているのだがなんだか様子がおかしい。
どうやら財布を失くしたようだ。
しっかりしろよと斉木を見た大竹が一言。
「その尻のポケットに入ってるやつじゃないか?」
財布は見つかった。でも開けてみたら中身は入っていない。
キャッシュレス時代だしねえと飄々と返す斉木に呆れ、俺たちはみんな昔のままだなとこぼす。
「増えるのは薬ばっかりだよ」

そんな二人を見なららじれったそうにしているきたろうが

「そろそろ・・どうだ。うちの孫、かわいいだろう?」

もちろん孫はまだ帰ってきていない。
一体何をわけのわからないことを言っているのか、と唖然とする大竹を気にせず、斉木は「おおーかわいいなあ!目なんかお前にそっくりだ」と褒める。
そうだろう!と喜ぶきたろうと斉木が空のベビーベットを覗き込み『いないいないばぁ』とはしゃいでいる姿に大竹は頭を抱える。

この年になると赤ん坊の可愛さがわかるようになるんだ、と幸せそうなきたろう。
き「まるでグリコだよ。天使」
大「森永じゃないの?エンジェルって言いたいんじゃないの?」

そこに1本の電話が入る。
検査のために出かけていた孫は、そのまま予防接種も受けに行くことになったらしい。
1時間以上かかるだろう。いつまで待っても赤ん坊はやってこない。
そんなに長くは待てないので今日は帰ることにした二人をきたろうは慌てて引き止める。

 「わかったよ。俺が赤ん坊をやる!毎日見てるからできるはずだ!」

 床に寝っ転がりオギャーオギャーと叫ぶ老人。
大竹は呆れて言葉も出ない。
斉木はなぜかベビーベッドの側に置いてあった電気ポットを持ってくる。
「大きさと重さは大体これくらいじゃないかな」
電気ポットを赤ん坊に見立ててあやすきたろうと斉木。

 「あっ、頭を押したらおしっこ(お湯)が出ちゃった」
大「ポットだからだよーーーーー!!!」


上演時間は15分程度。友人の初孫を見に行く。
時代を見つめながら笑いと真摯に向かい続けると、70代でこんなネタができるのだという幸せな未来のようなコントだった。
タイトルの「赤ん坊待ち」は「ゴドーを待ちながら(ゴドー待ち)」からだろうか。
たわいもない会話を繰り返しながらいつまで待っても赤ん坊はやってこない。

私が心を動かされたのは、いない赤ん坊を褒めるのを見て呆れている大竹さんへ斉木さんが何気なく言った

「大抵、赤ん坊ってのは可愛いもんだよ」

という台詞。
この歳になれば赤ん坊なんてのはみんな可愛く見えるから、ここにいてもいなくても大して問題ないじゃないか。
若い役者が老人に扮して同じ台詞を言っても、この感じは絶対に出せない。

以前ゴールデンラジオで孫の話になり、大竹さんが
「孫ってのは可愛いんだぞ~。自分たちが若いころは親や祖父母を見てそんなにかな?と思ってたけど、実際は想像の1000倍可愛いぞ~!」
と実感を込めて話していたのを思い出した。
老人になったからこそできるコント。
また、カーテンコールではこのコントの作者であるふじきみつ彦さんに、今年お子さんが生まれたことが明かされていた。
親になったからこそ書けるコントでもあったのかもしれない。

シティボーイズ3人だけのコントは、ムロさんが是非にと希望して社長にかけあい実現したものらしい。
きたろうさんと二人でコントをやりたいと望んだのもムロさんだったとか。
シティボーイズファンとして頭が上がらないです。
後は今回のライブをきちんとした映像で残してあるのを願うばかり。