ロッキー・ホラー・ショー
脚本・作詞・作曲:リチャード・オブライエン
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太/岡本健一、笹本玲奈/中村倫也、グリフィス・ちか、
右近健一/辛源、ニーコ/飯野めぐみ、生尾佳子、JuNGLE、皆本麻帆/
ROLLY/藤木 孝
今回のRHSで感動したのが「日本的アレンジ」の一つの正解について。
今回のRHSは新感線的なボケ・ツッコミがふんだんに入っている。
おなじみの「ガスッ、ゲシッ」というSEの入るツッコミね。
これが素晴らしい効果を生んでいた!
台詞もあらすじもほぼ固まっているRHSという舞台はいじるのが
難しい・・・と思う。
ファンは新しい素敵なサムシングを期待しつつ、同時に「変わらずに
いてほしい」という気持ちを強烈に持っているから。
オリジナルを尊重しすぎてそのまんま使えばこれならDVD見てりゃいいと
言われ、アレンジ入れすぎて屋台骨を崩してしまうとこんなのRHSじゃねえと言われ。
そんな貴方に今回のRHSツッコミバージョン!
このツッコミという装置の優秀さよ。まず時間をくわない。
オリジナルの台詞と台詞の間にドカッ!ガスッ!と入れるだけで、一瞬で
"笑いを増幅する演出”になる。
そして後を引かない。これは新感線ツッコミのプロフェッショナルな古田さん
だから特に切り替えが上手いのだけれど、相手の体が吹っ飛ぶくらいの
パンチ入れても次の瞬間舞台の流れが元に戻る。
さらに予測不能なバイオレンスってそれだけで面白い。いや、予測できても
バイオレンス面白くて気持ちいい(笑)
いのうえさん、三池監督好きだもんなあ。
事前のインタビューやラジオでRHSに近い映画として「キックアス」が
入っていて、ん~そうかな?と思ったのだけれど、今回の舞台を見て
ちょっと納得したよ(笑)映画版でも私、フランクがジャネットにビンタ
かますシーン大好きなんだわ。
このSE付きボケ・ツッコミの演出で、海外のミュージカルを「日本的に」
アレンジしたということが素晴らしい。
私は、日本独自の質の高いオリジナル作品が生み出されて初めて、
”日本が成熟した文化としてミュージカルを持つ”ということになるのだと思ってる。
もっと欲を言えば、その作品が海外に輸出されるくらいになることが理想で、
残念ながら今はその状態じゃない。
オリジナルを作るにしても海外ものを輸入して演出するにしても、どうも
「ミュージカルは本来西洋のものだから…」というコンプレックスが邪魔をする。
そして「和を取り入れてみました!」ってことで、衣装に着物を使ってみたり
見栄を切らせたり、演奏に和太鼓や雅楽を使ってみて・・・スベる(笑)
でも、今回のRHSで「和を取り入れるって歌舞伎や芸者やフジヤマだけじゃ
ないよ。漫才、ボケ・ツッコミの笑いセンスだって他の国にはない日本的なもので、
きっとまだまだ他にもあるよ」という可能性を教えてもらったような気がして。
客席で勝手に感動してました。一観客なのに。