”「どうして芸人になろうと思ったんですか?」
一番多く投げかけられたこの質問に、いつも心の中で聞き返す。
「どうしてみんな、芸人になろうと思わなかったんですか?」
時はバブルまっただ中。
福岡の片隅で、時代の高揚感に背中を押された少年が抱いた、
芸能界への夢の行方は?
博多大吉的『成りあがり』は疑心暗鬼に満ちていました。”
博多大吉さんがcakesで始めたエッセイがとてもいい。
穏やかで理知的な口調そのままに、目で追う文章がそのまま
耳に聞こえてくるよう。
時代背景とお笑いへの興味を絡めた内容が興味深く、続きを
読まずにいられない。
一冊目の著書「年齢学序説」はあまりピンと来なかった。
ひたすら著名人と年齢の関係について、データを取り分析をする。
失礼ながら、あんなにトークも漫才も上手くてスマートな人が
ずいぶん理屈っぽい本を書くのだな、と少々がっかりした。
ただ、最後に記された「自分自身の物語」はすこぶる面白かった。
この本の大部分は、この部分を読ませるための長い長い助走だったのか、と
驚いたほどに。
年齢学序説、資生堂の文化広報誌に寄稿した読み切りの短編を経て
始まったこのノンフィクション小説は、大吉さんのどこか自虐的で
全てを俯瞰で眺めるようなクールな視点が育った理由も解き明かされる。
誰よりもお笑いに興味があるのに、注目されることが苦手で
芸人に不向きであることを自覚していた高校時代。
まぶしいほど真っすぐに芸人への道を進もうとする大親友に
焦燥感を覚える大学時代。
東京や大阪に行かなければ芸人になどなれない、と自分を
納得させていたのに、福岡に吉本ができたことにより、巻き込まれるように
お笑いの世界に入ってしまった複雑な心境・・・。
“やがて僕以外の誰かが作ったテレビを、僕はどんな気持ちで眺めるのだろう。 ”
連載が完結して書籍化されたあかつきには、立川談春の赤めだかのように
芸の世界と青年の成長を描いた傑作青春物語になりそうな予感がするのです。
・・みんながトーキョーライブでジャニーズとからむ、大吉先生が声を
やっているナナナに夢中になっているうちに、
宣伝しておこうと書いてみたよ!
伝われ〜〜。
cakes