その1 女と男によるリーディング
『部屋』・・・初演1985年「かたつむりの会」演出:山下悟
出演:男(岩崎正寛)、女(新澤泉)
その2 円熟俳優たちによるリーディング
『淋しいおさかな』・・・1073年発行「別役実童話集」より演出:鵜山仁
出演:男1(鈴木瑞穂)、男2(三谷昇)、男3(金内喜久夫)、女1(久松夕子)、女2(川口敦子)
もうこの先、気軽にベテランなんて単語使えない。40代なんて鼻垂れ小僧ですな!
選ばれた作品は、70年代に別役さんがNHKの子供番組に書いた童話集より。
童話のタイトルがまた素敵。「淋しいおさかな」「歩哨(ほしょう)のいる街」「猫貸し屋」
「一軒の家、一本の木、一人の息子」
どの話も童話ながら死の存在が見え隠れする。胸にポカリと小さな穴が開く感覚がある。
でも生々しさはまるで無い。それどころか匂いも体温も感じない書き割りのような世界。宮沢賢治より稲垣足穂。
でもこういうどこか淋しいお話こそ、子供の心にいつまでも残るのかもしれない。
その3 シンポジウム~別役実を語るお茶の会~
ラストは座談会。
三谷昇さんがチャーミングでお元気だった。御年83歳でいらっしゃる。その三谷さんが初めて別役脚本を読んだ時の衝撃を
「こんな本は見たことがない・・なんて凄い・・まるでクレーの絵が動いているようだ!」と
語ったことに感動してしまった。なんと美しい例えなんだろう。
そして「この別役実フェスティバルが開催された事が本当に嬉しい。ありがとうございます!」
と深々とお辞儀をして喜んでいらっしゃった。
別役作品への愛を感じる。
また、別役舞台との関わりが深い金内喜久夫さんは、別役作品は感情を込めずに
そぎ落とす必要があるので、そこがとても難しいと語る。演劇評論家の大笹吉雄さんが、「諸国を遍歴する二人の騎士の物語」初演を見た時に、
終演の老騎士を演じる二人を
「新劇俳優として老年まで生きた人間だけが出せる演技。これは歌舞伎でも新派でも
大衆演劇でも出せない、新劇という生き様が顔に現れる芝居だった」
と絶賛していて、秋にテアトルエコーで同作を観劇するのが楽しみになった。
朗読劇も座談会も素晴らしかった・・!
何作か続けて見ることでボンヤリ考えた別役作品の魅力、演技の難しさなどが、この日のイベントで少し解き明かされたような気がする。