2013年9月5日木曜日

初代三遊亭天どん真打披露特別公演「天は何を見ているのか 新作の日」

天どんさん、真打おめでとー!わっしょーい!
円丈門下といえば新作派ということで、あえて新作の先輩方が並ぶ日を選んで
観にいってきましたよ。
 
百栄「船越くん」
昇太「マサコ」
円丈「悲しみは埼玉に向けて」
口上
彦いち「掛け声指南」
天どん「カベ抜け」 
 
SWAなお2人は代表作を。
彦いちさんは「まさか黒紋付でこの話するとは思ってなかったけどねー」なんて笑っていた。
久しぶりにムアンチャイに会えた!
百栄さんはサスペンスドラマにありがちな風景から作られた「船越くん」。
円丈師匠の悲しみ~は代表作の1つでありながら、生では聞いたことがなかったので
嬉しかった・・・ん?考えてみたら誰もおめでたい落語やってないぞ!
 
トリの天どんさんは幽霊との奇妙な二人暮らしを描いた「カベ抜け」。
初めて聞いたけれど「新婚かーーー!!」という雄叫びが笑えたよ。彼らしいゆったり
まったりとしたテンポで。これからさらに磨かれてゆくのでしょう。
 
口上がまたゆる~い。
一応形式通り、緋毛氈の中央で天どんさんが頭を下げているのだけれど
あまりにも皆が好き勝手にワチャワチャ騒ぐから、途中で肘ついてウンザリした顔をしている。
 
 
彦いち「あんまり思い出ないんだけど。間が悪いっていうかさあ、居酒屋で天どんが
話始めると店員が注文取りにくるんだよねー。アナウンスが鳴ったり。」
 
百栄「僕、昨日甥っ子の結婚式に呼ばれたんですけど。落語家だから祝辞を頼まれる
だろうと用意していたらまさかのご指名無しで。だから今やりますね。
○○君、御結婚おめでとうございます!」
 
昇太「天どんなんて名前つけられて、かわいそうだなーと思いましたよぉ~。
二つ目になってもまさかの天どんのまま。今回真打昇進ということでさすがに変わるのかと・・・。
でもまあ、これから上手な天どん<上天丼>になればいいね!(すべったー)」
 
円丈「(昇太さんの話を受けて)こいつは間が悪いんですよ。
二つ目になる直前に私をしくじって。お前なんか天どんのままだ!って。今
回さすがに変えていいと言いましたよ。そうしたら本人が是非そのままでって 
(天どんさん、ええ~?と真ん中で複雑な顔)」
 
 
わはははー。こんなんですよ、落語の口上って。堅苦しいところが全然なくて楽しいの。
初めて落語を聴く人をどの落語会に連れていくか。これは落語好きにとって重大な
問題であり悩みごとなのだけれど、一番いいのは真打披露興行中の寄席に連れていくことだと思う!
まず出演者が豪華。寄席全体が華やいでいる。何より口上がある。
 
協会だの抜擢だの色々な例外事項は除いて、一般的に東京の落語家は入門して
13~15年程で自動的に真打になる。それ以降一人前の落語家として認められると
いう意味では、真打披露は成人式に似ている。そして師弟は親子のようなもの。
 
娘・息子の晴れ姿を祝うように、口上には師匠をはじめ協会の幹部・大先輩たちが
ずらり並んで言葉を添える。グッとくるようないい話を披露する人がいれば、齢70を
超えた大幹部がおちゃめないたずら仕掛けてくる時もある。
 
「何もこれから生涯贔屓にしてくれと言うじゃありません。
今日ご来場された御客様と彼には“ご縁ができた”ということです。
この先どこかで彼の名前を偶然見かけた時に、あぁそういえばこいつの披露目に
居合わせたっけな。どれ、ちっとは上手くなったかな?
心の隅に名前を少しだけ刻んでもらえる。それで十分なのでございます。」
 
ご縁を大切にする。嗚呼、善い言葉だな。
真夜中に放送されている落語番組や、地域の小さな落語会でその若き真打の名前を
みかければ、きっと縁を結んだ日のことを思い出す。