2018年8月10日金曜日

すいているのに相席’18 決断

今年も開催されたすいているのに相席。


★刃と刃
平成も終わろうという年に真剣を構えて決闘をする男が二人(野田、塚本)。
二人の力は互角のためなかなか踏み出せず、睨みあいの状況が続いている。
二人の決闘を止めようとする男(本間)は、美味しそうに漂ってくる浜焼きの匂いで
仲裁を試みるが失敗に終わる。

本間さんが頑張るオープニングコント。
「あれあれ~?美味しそうな匂いがするぞぉ?」の、マンガチックな表現がよく似合う。
「貝のばかやろーーー!」というオチが、千秋楽だけ「すいているのに相席 始まるよーー!」に変わっていた。

 
★謎解き
雪に閉ざされたペンションでオーナー殺害事件がおこる。
犯行時刻に宿泊客(バ吾A、鬼頭、宮戸、本間、山脇)は全員応接間にいたため、
犯行は不可能だった。
そこに居合わせた探偵(溜口)による華麗な謎解きが始まる。
しかし真犯人(本間)による突然の自白。探偵が暴いたトリックはことごく外れ、
予測は全て裏目に出てしまう。
ある者は切り殺され、ある者はベランダから転落死。
自供した犯人は刃を自分につきたてる。そして誰もいなくなった・・・探偵以外は。

ザ・ギース尾関さん脚本のコント。
金田一少年のような溜口さんが、次々に推理を外していく時のテンポが良さが楽しい。
相席反省会で、なぜ鬼頭さんの役は犯人でもないのにあんなに動揺しているのかと問われ、
部屋を出たところを見られているので、疑われる可能性があるので怯えていたのだと答えていた。

「大きな包丁を持っているぞー!」と見たままを叫ぶ、わざわざ犯人のいる方に逃げて殺される。
舞台裏で見ていた野田さんが「出てるやつら全員バカだよなーと思ったもん」。

 

★チェ・ゲバラのTシャツ
最近はあまり町で見かけなくなったチェ・ゲバラのTシャツを売る男(塚本)。
ゲバラTシャツの★の部分は、ツボを押す目印になるらしい。

塚本さんの1人コント。
楽日は初日の倍くらい長くなった。
その理由は、せきしろさんが自前のおもしろTシャツをどんどん追加で持ってきてくれるから。
今回の相席に参加するにあたり、レギュラーメンバーのギースの影を大きく感じていたラブレターズの二人。
塚本さんは、どのコントでも尾関さんや高佐さんならばどう演じるのかな?と考えていたが
「でも、チェ・ゲバラだけはどちらが演じている姿も全然思い浮かばなかった。」

 
★バーチャル握手会撮影
カメラをファンに見立て、握手会風に撮影をする「バーチャル握手会」。
今日はリリカラナイシュプール yumi-sanoの撮影会だ。
撮影監督ルーカス山田(溜口)による水着の強要にマネージャー(宮戸)は猛反発するが、yumi-sanoはファンが喜んでくれるのならばとOKを出す。
だが、着替えから戻ってきた彼女(バ吾A)は容姿もキャラもすっかり変わっていた。

「外野は黙ってろ!内野は声出していけ!」
今回の日常生活で使ってみたいフレーズNo.1
溜口さん演じるルーカス山田とAさんのアイドル(変身後)という、これ以上ない程濃いキャラクター同士が、相乗効果でどんどん面白くなっていく。
また、会話のテンポの速さが面白さに拍車をかける。
日替わりゲストの女性がアイドルを演じ、それ以外の回では山脇さんが演じていた。

ルーカス山田はトシちゃんの物まねだと皆に言われるも、溜口さん曰くキザな監督をイメージしたら自然にああなったとのこと。
マネージャー「何がおかしいんですか?!」
ルーカス「ああ、すまない。○○を思い出していたんだ」
ここの○○は、稽古中から溜口さんが毎回内容を変えていたらしい。
ちなみに途中から追加された「これはマネージャートゥルースです!」は宮戸さんのナイスアドリブ。


20××年東京
荒廃した東京の街をボロボロの姿の男(本間)が彷徨う。
一体東京に何が起ったのか。生存者は自分以外にいるのか。
とにかく情報が欲しい。
探し当てたラジオのチューニングを必死に合わせると「夢芝居」が流れてくる。
しかし、その歌声は梅沢富美男ではない。
「ヒデちゃんだ!中山秀行の夢芝居だ!」
次に流れてきたのは、イントロアレンジの癖が強いダイヤモンド☆ユカイ版「夢芝居」。
夢芝居のカバー曲を次々と流していたのは、ラブレターズのラジオ番組だった。

本間さんの1人コント。
せきしろさんが自前のおもしろグッズをどんどん追加で持ってきてくれるので…という、チェ・ゲバラと同じ裏話が披露されていた。
この男は実はラブレターズの大ファンという裏設定があり、よく見るとラブレターズの単独Tシャツを着ている。

反省会でも出演者に大人気で、ぎゅっと縮めれば多分2分で終わる、男が情緒不安定過ぎると皆で大盛り上がり。
「おもちゃと写真集があんなに良い状態で残っているし、ラジオも放送しているのだから、多分東京は大した被害じゃないよ。
なのに、なんであいつだけボロボロなんだろう(笑)」

夢芝居のたっぷりしたイントロをそのまま流すのが凄い、芸人ならば怖くなってイントロを詰めたり短くしようとするという意見があり、確かにそうかもしれないなと。
ジャガーさんのファイト!ファイト!千葉!や長渕のとんぼ、藤井フマナイヤの熱唱など、すいているのに相席ファンはフル尺の歌を聞かされることに関して大分耐性ができている。

 
★レッスン
ホリプロ所属の女性ユニット(バ吾A、溜口)に、ストリートでダンスレッスンをしている
先輩がいる。彼女は伝説のバラドル井森美幸(山脇)。
いくら教えてもキレ良く踊ってしまう後輩達に、井森は自らあのホリプロスカウトキャラバンで披露した歴史に名を残す「井森ダンス」をレクチャーする。
脱力した手足。虚脱感。いきなり蚊を叩くような振り。
突然襲いかかってきた町の不良(野田、鬼頭)も井森ダンスで撃退する彼女は、今日もキラキラと輝いている。

作者のザ・ギース高佐さんが、相席では山脇さん主役のコントが案外少ないので、彼女が芯となるネタを書いたと話していた。
その狙い通り、山脇さんの井森美幸っぷりが最高にカッコいい一本。
密かにダンスのキレが良いAさん&溜口さんコンビにも注目。

野田さん演じる不良が登場シーンで言う台詞を自分で考えるものの、毎回どうも的外れで皆を困惑させていたらしい。
「パンて美味しいよなぁ」とか。パン?
しかし、ナイフと銃を振り回した不良がヒャッハーしてくる世紀末都市で、路上ダンスレッスンをしていて大丈夫なのだろうか。


★告白
放課後の職員室で補修を受けている男子生徒(本間)は、担任の女性教師(宮戸)に
密かに恋をしていた。
思い切って告白をすると、教師は思わせぶりな接続詞で彼を翻弄する。

初参加の西垣匡基さん脚本。
接続詞で男を惑わせるという不思議さはありながらも、相席では珍しい真っすぐな恋模様が展開される。
宮戸さんの女性教師がさすがの色っぽさ。髪をかきあげての「・・・えっ?」は本人の発案とのこと。
稽古中はなかなか上手くいかなくて、演劇のようにエチュードを試すも経験の無い二人は戸惑ったそうな。

 
LUCKY
街で見かけたラッキー池田(鬼頭)にカップル(山脇、塚本)が近寄っていく。
ラッキー池田の大ファンだと名乗る彼女は、頭上の象・ガネーシャ様にばかりアプローチ。

初参加の福田真之さん脚本。
出てくる人がみんな変。誰もまともな人がいない。
でも妙におかしい。
実際、あらすじを書こうとしたけれど、何と書けばいいのか悩んでしまった。
カップルが喧嘩して、ガネーシャ様のおかげでプロポーズが成功する話?
タイトルで流れるとっても!ラッキーマンのテーマソングが脳内をまわる。


★すいているのに相席ハーフタイムショー
アイアム野田さんが歌う小学生替え歌
 

★モノボケの岩
とある観光地に祀られている「モノボケの岩」には、触るとモノボケが上手くなるという言い伝えがある。
はしゃいだ観光客達(日替わりメンバー)がたまにやってきては騒いだり、説明を
丁寧にチェックするタイプの珍しい一人客(鬼頭)が現れたりするが、基本的には閑散とした観光地である。
警備員(宮戸)も1人淡々と業務をこなしている。

日替わりゲスト参加のモノボケコーナー。
それが終わると鬼頭さん扮する観光客がやってきて、独り言を呟きながら観光地にありがちな名所の由来音声を延々と聞くという、とても不思議な構造のコントになっている。

宮崎美子による「宝本みりんラップ」もまさかの4番まで聞かせられるが、前述の通り曲をまるごと聞く事には耐性のある相席ファンである。
ところでこの「宝本みりんラップ」、気になって検索をしたら近田春夫の仕事だったので驚いた。

 
★レジ
スーパーのレジで焦りもせずにたっぷりと時間を使う女性客(山脇)の後ろで、次の会計を待つ男性客(溜口)が猛烈にイラついている。
彼はとにかく時間がない。
ある時刻を過ぎると大変な事がおこってしまう。
「もう間に合わないよー!そろそろ魔法がとけちゃうよ~!!」

なんと魔法がとけたら溜口さんは猫だった。ニャー。
それがわかってからもう一度見ると、
甲高い声とやたらと突っかかるような喋り方が、猫のニャー!ニャー!と訴える声を思わせる。
溜口さんは様々な役の特性を掴んで演じ分けるのが上手い。
外国人研修バイト役の野田さんもいい味を出していた。

 
1990年代初期によくいたお笑いコンビのスタイルを2018年風にアレンジしてみました
お笑いコンビ「スマイルアプリ」(バ吾A、塚本)によるショートコント集

タイトル通りのリズミカルなショートコント集。
今回参加した作家さん達がネタ案を提出して、採用されたものを披露したとのこと。
モデルとなった芸人は多分色々いて、せきしろさんはぴのっきをの名前を挙げていた。

スマイルアプリには裏設定が色々あり、まるで本当のコンビのようにネタ合わせもしていたので、稽古で皆の前でネタをするのが恥ずかしかったとAさんが話していた。
ちょっと照れるらしい。

 
★大切な人
緊急手術が必要な娘を思い、病院で取りみだす父親(高佐)。
娘の血液型はRH-のため、輸血に必要な血液が足りないのだ。
誰でもいいから助けて欲しいと願うところに、ギターケースを抱えた1人の男(尾関)がやってきた。
彼の血液はRH-。しかも娘の知り合いだと言う。
「彼女は僕の大切な人です。セックスフレンドなんです!」

ザ・ギースDAYのスペシャルコント。
相席らしからぬ下ネタぶりに客席も少々戸惑う。脚本は尾関さん。
出演者・スタッフで作っている相席LINEでもザワつき、これはギースで処理しなさいという結論になったらしい(笑)
尾関さんはラブレターズに演じて欲しかったと話していた。

 
★暗闇と光と指輪と
明日に結婚式を控え、事故で婚約者ミカ(山脇)を失ってしまった男(溜口)。
何でもいい、彼女を生き返らせて欲しいと懇願する彼に、悪魔たち(鬼頭、本間、宮戸)が語りかける。
彼女の大事にしている物をひとつ天に掲げよ。
さすれば彼女の最も大切な存在と引換えに、生き返る事ができる。

「二人で一緒に生きていくことは出来ないけれど、君の幸せをずっと願っています」
男は彼女の薬指から想い出の指輪を抜き、頭上高く天へと掲げた。
暗闇の中、まばゆい光が彼女を包む。
そして・・・

「田嶋陽子の前までのシーンはどーーーでもいい」byバ吾A
いや、まあ、確かにそうだけれど。
過剰なくらいのコテコテな演劇ぶりにニヤニヤし、最終的に泣ける結末に辿りつくかと思ったらまさかの田嶋陽子。
一生懸命練習したメンバーは「田嶋陽子ひとボケのために一ヶ所もミスれない!」と嘆く。
結構涙腺を刺激されたのだけれど。いやはや。

 
今回のすいているのに相席は初回から参加しているザ・ギース、脚本の上田さんの名前が無い。
そして出演者・脚本に新しい顔ぶれが入った。
本当ならば相席は前回で終わるはずだった、というせきしろさんの意味深なツイートも相まって、何となくモヤモヤを胸に抱えたまま「すいているのに相席反省会(裏)」へと足を運びようやく経緯を知る。

Aさんとせきしろさんの中では、前回で相席はやりきったという感覚があったので次公演を考えていなかった。
しかし、是非相席は続けて行きたい!という熱意を持った制作の石川さんが企画をして、お二人にオファーをして実現したのが今年の舞台だったそうだ。
それが今年の2月。
単独ライブ期間と重なるため、ザ・ギースは参加することができない。
上田さんもヨーロッパ企画のプロジェクトがあるため、脚本の提供が厳しい。

それならば思いきって広げてみよう。
「すいているのに相席」そのものを変えるのではなく、より広げていく感覚。
「○○じゃなければ相席ではない」という固定観念をはずして、相席という核がしっかりとしていれば、どんな人が参加をしても場はきちんと成り立つはずだ。

石川さんのこの試みは成功したのではないかと思う。
何をもってして相席らしいと感じるかは、きっと人それぞれ違うだろう。
少なくとも私は、これは確かに相席だなあと終始舞台を楽しんだ。

物販にも使われている椅子のマーク。
この椅子を相席だと考えて、その数が減ることに悲しむこともあった。
でも椅子じゃなかったんだ。
椅子の置かれている場所そのものが相席だった。
だから、この椅子が3個でも10個でも「すいているのに相席」だ。

変わった形の椅子が増えることもあるだろう。
古い椅子が戻ることもあるかもしれない。
あればいいなと思う。