初めて友人達と集まって鑑賞したが、点数や順位の事さえ考えなければ夢の様な
コント番組だと思う。
多種多様なコントが、ゴールデンタイムのテレビに咲き誇る。
優勝したハナコは勢いと華があり、そのキャラクターはお茶の間に愛されるだろう。
ファイナルステージで見せた若いカップルの戸惑い、女の理不尽さ、何がなんだかわからないまま上手くいく恋愛の不条理さを爽やかに描いた。
新しい時代を切り開く、素晴らしいコントだった。
今年必ず決勝に行くと前評判だったやさしいズは、その名の通り優しさが持ち味だ。
会社から受けた仕打ちを恨み復讐を試みるも、楽しそうに深夜の清掃バイトをしている青年に毒気を抜かれてしまう。
ユーモアが怒りを溶かし、優しさが笑いを生む。こんな形の笑いがあることが幸せ。
マヂカルラブリーの「傘」は、そんなしょうもない事にループというSF展開を!と
いうバカバカしさで真っすぐ突き進む。手でウィーン!とSEをつけながら自動ドアに入るコントを、TVで見たのは久しぶり。
わかってやってるなーとニヤニヤする。
もっとかっ跳んだネタがあったけれど、大会側からのNGにより変更になったと聞く。
劇場で見る彼らはよりポップに狂っているので、今回の決勝進出を機会に、
TVの世界はOKゾーンを恐る恐るマヂラブまで広げてみて欲しい。
モノマネでおなじみになったチョコレートプラネットは、茶目っ気のある小道具
(ガジェット萌え!)だけではなく、演技もコント作りも器用だ。誘拐された男が犯人の言う事を全く聞かない。なだめる声すら耳に入らない。
途中から誘拐犯の「なんでこの男選んじゃったんだろう!」という心の嘆きが
透けて見えるよう。
ギャグ漫画のようにキャラの立った3人と名台詞が印象的なGAG。
ヒゲ面の学生服上等!これがフィクションの楽しさだ。そして宮戸さんは「いい女の具現化」である。
リアルさとは対極の作風なのに、がぶ飲みするジョッキのビールが減っていく様を、
切ない恋の砂時計と例える文学性がキラリと光る。
観たその日からもう使いたい、わらふぢなるおの空質問。
一度咀嚼して考えるということをせず、脊髄反射で聞き返してしまう後輩がおかしいような怖いような。
言葉のラリーが続けば飽きてしまいそうなところを、次はどう返してくるのだろうと
ワクワクする。
そして毎回予想の斜め上の質問が返ってくるのが気持ちいい。
二人の会話を永遠に聞いていたい。漫才にしても面白そうだ。
決勝進出6回目。今回がラストイヤーと公言していたさらば青春の光は、惜しくも
優勝を逃したが、予選を観た人たちからは今年こそ彼らの優勝だという声が聞こえていた。本人も優勝を予想していたというそのコントは、当然のように秀逸で力強く、
悔しくなるほど面白い。
出演者、順番、システム、その年の空気、審査員。
この組み合わせが違うだけで頂上に手が届かない。なんて難しいのだろう。
彼らが諦めたのだと言うかもしれない。
でも私には、才能ある芸人にキングオブコントが見限られたようにも見える。
だから、いつか見どころのある大会になったと思ったら、忘れ物を取りに来たような
顔をして戻ってくればいいと思う。
パニックペイという単語が頭から離れないだーりんず。
居酒屋で部下の支払いをこっそり済ませようとした上司の優しさが、不足の事態と調子の良い店員のせいで空回りしていく。
松本さんの演じる上司にリアリティがあり、コントに深みを増す。
もしかして彼は妻子と家のローンを背負い、自由になるお金は奢ってあげようとしている
後輩達より少ないかもしれない。
そんな背景を想像しながら見ると「(店長が)きっといい上司なんだろうなって」に
しみじみとする。
だーりんずと同じくSMAから決勝に進んだロビンフッドも、いぶし銀のコントを
見せてくれた。基本的に二人の掛け合いだが、後半に向けてどんどん盛り上げていく細やかな微調整を
どれだけのライブにかけて行ったのだろう。
ようやく結婚する息子の相手を不審に思いながらも、ラストで「幸せになれよ!」と
力いっぱい祝福する父親は切なくも愛おしい。
そして個人的に一番応援していたザ・ギース。
ネタ時間が5分と聞き、絶対に遡りカルチャースクールをかけるのだろうと予想していたところに、最新の単独ライブからサイコメトリーがまくって飛び込んできた。
ギースの特徴でもある仕掛けの面白さ・伏線の張り方を存分に見せながら、決して
そこだけにとらわれず、馬鹿馬鹿しさを忘れない。
こんな面白いコントをゴールデンで沢山の人に観てもらえるのが嬉しい!と、一緒に
決勝を観ていた友人達と喜ぶ。
今年は多彩なコントを揃えた素晴らしい単独ライブを2回も開催してくれて、
「これで十分だ!賞レースがなんぼのもんじゃい!」と思っていたのに。
その単独からのネタで決勝へ駆け上がった。最高じゃないか。
しかし「1組の勝者と9組の敗者」に単純に分けてしまうのはもったいない。
せっかく、今いちばん面白いコントのショーケースなのだから。
そういう意味では、全組に2本ずつコントを披露させてあげて欲しいなと思う。