2015年4月24日金曜日

下北沢大興行「芸人のマネージャーによるマネジメントとのお話」

B&Bで行われた「芸人のマネージャーによるマネジメントのお話」に参加しました。
司会はラリー遠田さん。出演者は松竹芸能の西尾和彦さん、サンミュージックプロダクションの小林雄司さん、ASH&Dコーポレーションの大竹涼太さん。
小林さんはロンハー、大竹さんはゴッドタンに出演経験が多いため、マネージャーという裏方仕事でありながら、お茶の間知名度が高いのが特徴的です。

お笑い界の裏側大暴露!・・・のような展開では全くなく(笑)、穏やかに真面目に進んだトークショーでした。
質問に対し「事務所ごとに違うと思いますが~」と前置きが多く使われたことからもわかるように、同じ業界とはいっても事務所によって方針も体制もかなり異なる。
大竹さんが質問に答える時は、前所属である人力舎の例で答えている場面がほとんどでした。
多分ASH&Dは規模が小さいので、一般的なお笑い事務所の通例からはずれることが多く、比較参照にならないから避けたのかな?と思います。

・マネージャーになったきっかけ

面白かったのは大竹さんの
「父親の仕事の反動か、自分はサラリーマンになろうとずっと思っていました。
でもお笑いは好きで、お笑いに関わる仕事につきたかったので、父親に口をきいてもらって人力舎に100%コネ入社しました!
すみません!だから面接の時の苦労とかお話することができません!」

いや、コネで入っても実力さえあれば認められて頭角を現す、という好例じゃありませんか。
コネも実力のうちとはこういうことですよ。

・給料の話

どうしてもお金の話を聞きたいラリーさん。
同年代の一般的なサラリーマンよりは低いでしょう、とのこと。
浅井企画は給料がいいらしいという都市伝説がある(笑)
実際にいるから聞いてみましょうよ、と客席後方に声をかけると、そこには浅井企画の三野マネージャーが。
三「そんなことないよー 全然ないよー」

昇給についても、そもそも給与査定はどうやるのかという疑問が。
担当タレントが得た仕事の量に比例して昇給するのであれば、すでに売れているタレントについているマネージャーばかり得ということになってしまう。
担当している若手芸人がドーン!と売れたところで、一体どの仕事がきっかけて火がついたのかなんて、誰にもわからない。
だから、査定のルールを独自に作っている事務所もあるし、わかりやすく年次でしか上げないという事務所もある。
CM契約など大きな仕事を取ると、特別手当が出る事務所もあるそうで。
それはモチベーションが上がっていいですねえ!と羨ましそうな3人。

・お休みの話

昼も夜もなく働いているイメージのマネージャーだが、きちんと休みは取れるのか。
これも事務所でだいぶ違うけれど、共通しているのは、就職してから数年間はかなり厳しいよということ。
複数のマネージャーをまとめる統括マネージャーになればある程度自由がきくが、基本的には担当している芸人に仕事が入れば土日祝日は関係なく付き添い、後から振替で休みを取る…取れれば。実際にはなかなか…。
ただ、大きな事務所は労基法を守るために、きちんと休みを取るよう指導されることも。

・仕事の取捨選択の話

仕事のオファーを受けるかどうかは誰が決めるのか。
答え:マネージャーが取捨選択をする。芸人が決めるということはほぼ無い。
もちろん芸人に相談することはよくあるし、特に家族が絡む場合はきちんと聞きますと。

現段階でこの仕事を受けることが、その芸人にとってプラスになるのか損をするのか。
芸人・タレントは案外、自身の商品価値をきちんとわかっていなかったりする…と書くと悪い意味にとられてしまうかな。
うーん、「側にいるマネージャーの方が、商品である芸人の価値を冷静に査定して売るべき戦略を立てることができる」かな。
だからこそ責任は重大だと話していました。

 「わかりやすい例で言うと、ロンハーに出ることがプラスになる女性タレントと、マイナスになる女性タレントがいますよね?
そういう見極めはかなり難しいです。」
という小林さんの話に、客席から納得の声が。

 また、ダンディ坂野さんは自分の価値をしっかりわかっていて、決して下ネタの絡む仕事は受けないので、あれだけ多くのCM依頼があるのでしょうという話も出ました。
芸人のTV出演となるとヨゴレ、下ネタ関係があるけれど、もし子供番組やアニメに出ていて子供からの人気がある場合はどちらを取ればいいのか。
こちらを取って失敗ではなかったけれど、もう一方を取ればより成功したのかもしれない。
難しい選択だし、正解は誰にもわからない。

・ダブルブッキングの話

どのマネージャーも1度はやってしまうミスといえばダブルブッキング。
現場が被らないようにスケジュールを調整するのは難しくないけれど、うっかりやってしまうのはTV番組の裏かぶり。
同じ放送時間に、同時に2つ以上のTV番組に出てしまうこと。
発覚したらギリギリまでどうにか調整をして、それでも無理ならば誠意をもって謝るのが大事だし、TV局の方もわかって下さる方が大半。

・CMの話

絶対にミスしてはいけないのはCM関係。
ダブルブッキングなどのミスであれば、もちろん悪いことではあるけれど、ディレクターさんやプロデューサーさんに頭を下げればなんとかなるが、CMは対企業だから。
契約書も交わしているので、契約内容に違反をすると大変なことになる。
(企業は莫大なお金を払ってCMを打ち、芸人やタレントを起用するのだから、その商品価値を下げてしまう行為をしないのは当然です、という補足がきちんとありました)

 そこで必要になるのが現場マネージャーの存在。
例えば、アサヒビールのCMに出ているタレントが、番組で食レポをする際にキリンビールを飲んでしまうのはNGなわけです。
しかし、出演しているタレントは番組に集中しているし、そこまで気がまわらない。
ここで現場マネージャーがいれば気がついて
「すみません、CM契約があるのでビールの銘柄がちょっと…」
とストップをかけることができる。
CMの禁止事項はものすごく細かいものもあるそうで「えっ、そんなのも駄目なの?!」と驚くようなNG例がありました。

・単独ライブの話

CMとはまた別の意味で、絶対にミスができないのが単独ライブ。
TVに出るようになった芸人も、定期的に単独ライブを行うことにこだわる人が多い。
その単独ライブにかける想いは私たちが考えているよりずっと大きく、精神的な不安や負担も多いためライブ前の期間が一番ピリピリしている。
芸人本人がそれだけ神経を注いでいるのだから、舞台の内容以外の部分でスタッフやマネージャーがミスをすることは絶対にできない。
「単独ライブ自体は全然儲からない、むしろ大赤字ですよ!」…だそうです。
それでも芸人のアイデンティティというか、自分たちの出自は舞台だという自負があるのでしょうね、と話していました。

・マネージャーがTVに出る話

マネージャーがTVに出ることは損か得か。
小林さんも大竹さんも
「マネージャーの知名度が上がることで、担当している芸人に多少なりとも仕事が還元されるのであれば得だし、断るという道はない。ていうか、断れない。」
そうか~。自分が断ることで芸人の仕事が減ったら、何考えてんだ?!という話になりますもんね。
サンミュージックには、TVに出る機会があるマネージャーが多いそうです。

また、大竹さんはゴッドタンで有名になったことにより、普通のマネージャーであれば初めまして、と1から関係性を作らなければいけない仕事相手でも「番組見ていますよ!」と言われ、ポーンと飛び越えて一気に距離を縮めることができる。また、なかなか会えないような上の立場の方とも会いやすい。他の方に比べて随分楽をさせて頂いているし、申し訳なくもありがたいことです、と恐縮しながら感謝を述べていました。

・結局、就職先としてお笑い事務所のマネージャーはどうですか?

何度も繰り返された言葉がここでも。
「事務所によります!」(笑)
そもそも新卒採用が毎年必ずある会社は少ないとのこと。

 大竹さんの話で印象的だったのが
「私たちの仕事は『儲かる』と『面白い』の二択がある場合に、『面白い』の方を取ることができる。
それが許されるんです。
これが許される仕事は、なかなか無いと思います」

給料もあまり高くはないし、休みもとりづらい。
頑張って売り込んでいたコンビが解散してしまうのは切ない。
しかし、お笑いが好きであれば、そのお笑いの現場に一番近くにいて一緒に笑うことができる。
マネージャーは素敵な商売。