不思議な新真打・立川こしらさん。
気がつけば真打昇進も果たしていた立川流の異端児。
能天気でいい加減な人かと油断していると、フリートークの中で
驚くような鋭さ・怖さ・発想力をチラつかせてこちらを驚かせる。
今回はおすすめpodcastで、そんなこしらさんになんだか感動を
させられたおはなし。
新ニッポンの話芸podcast
広瀬和夫氏プロデュースの落語会「新ニッポンの話芸」にお客さんを
呼び込もう、という主旨で落語会メンバーのトークを配信しているポッドキャスト。
メンバーは立川こしら、三遊亭萬橘、鈴々舎馬風&広瀬和夫さん。
始まった頃から聴いているけれど、このポッドキャストが滅法面白い!
3人の落語家は、公式に書かれた
“古典落語を窮屈な様式美の世界に閉じ込めることなく
「現代に生きる大衆芸能」として提示”しようとしている若手、という説明が
ズバリとあらわしていると思う。
萬橘さんは古典の世界から逸脱しないギリギリまで手を入れるタイプ。
馬るこさんは新作も手がける大胆の改作タイプ。
こしらさんはトリッキーな改作。
落語マニアからは出てこない現代的な発想にびっくりさせられつつ意外に元の話に忠実。
3人が落語界のゴシップを出してご機嫌を伺いつつ(笑)、落語ファンが
是非聞いてみたい話題を色々取り上げてくれるのです。
◆気になる若手をピックアップ
自分達よりさらに若手で、最近注目して欲しい落語家を紹介する回。
言葉をにごしてあまり具体的な名前をあげない萬橘さん。
すでに若手の新作派のために「虎の穴」という落語会を立ち上げて
応援している馬るこさん。
こしらさんはいつものように他の人の話題にちゃちゃを入れつつ、立川流の
話題を求められたら、驚くほどスラスラとおすすめの弟弟子を挙げだす
しかもその人選が的確で、プロデューサーの広瀬さんが
「へ~!ちゃんと見ているんだねえ!」と驚きの声を上げるほど。
あんなに普段「俺は自分のことしか興味ないんで」というポーズをとっている
こしらさんが・・・。しかも、その注目の若手の中に残念ながら志らく一門が
入っていないという事実も分析(後かららく人さんの名前は出している)
以前2011年7月16日の日記で、真打前のこしらさんに落語家らしさが見えてきた気がする
という感想を書いたけれど。
きちんと立川流の弟弟子を見る目線が備わっているんだね・・・。
立川流一門会に出るようになったことも大きいのかな。
なんだか嬉しい驚きでした。
◆好きな落語って何?
一番好きな落語は何?という、単純だけれど落語家さんに是非聞いてみたい
話題だった回。
こしらさんは、タイトルわかんないけど宝くじ当たっちゃう人の話、みたいな説明を
していたので富久かと思ったら「水屋の富」でした。えっ、渋いぞ!
個人的な話ですが、私は水屋の富は苦手で。
以前にさん喬師匠で聞いた時、あまりに描写が巧くてリアルで。
水屋さんの苦悩が自分にのしかかるように苦しくなっちゃったんだよね・・・。
でも、こしらさんによるこの落語の解説に目が覚める思いをした!
以下、正確ではありませんが
「テーマを履き違えちゃう人のおかしさ?
大金が当たったんだから持ってどっか行けばいいのに、こいつは
それが出来ないんだよ。仕事辞めると周りに迷惑かかるからって。
現在で言えば3億円くらい当てた人でしょ?
3億あるなら、多少人に迷惑かけるくらいいいじゃん無視すれば。
それなのにこいつは「いや、後任が決まるまで私は仕事続けますんで」て
辞めないんだよ。
でもさ、こいつの仕事ってオフィスビルに朝早く来てトイレ清掃するような
大した仕事じゃないんだよ。
この小市民ぶりが大金が手に入ったという大雑把さに勝てないっていうか、俺はそこが超面白いんだよね~」
うわー、そういう視点で水屋の富を見るのか!
そう考えるとまるでこの噺がちょっと不条理なコメディに感じてきた。
こういう感性で落語を改作するから、こしらさんの落語は面白いんだなー。
先日は私の大好きなムーンライダーズの白井さん&武川さんと組んで
なんとフジロック出演を果たしてきたこしらさん。
昔から変わらないようで、でもどこか進化している予感を感じつつ。
読めないというか食えないというか・・・不思議だなあ。
定点観測したくなる落語家さんなのです。