<地味目なルックスの眼鏡おばちゃんが2人
会社勤めの長そうなベテランOLが2人
そんな4人の女性たちがライブを開催した
だって彼女達は・・・とびっきりの女芸人だったのです>
はぁ~幸せなライブだった。
30代、独身、都会に一人暮らし。
共感してしまう出来事ばかりだもの。
気がつくと身についているおばちゃんな思考&傾向あるある。
考えてみると彼女達と自分を「近い」なんて思うのはおこがましい
話なのだ。
片や、あのM-1決勝に出場した最初で最後のアマチュア漫才コンビ。
片や、歌ネタ王のファイナリストで人気急上昇の歌ネタコンビ。
平凡なOLの私から見れば遠い存在のはずなのに、彼女達の
親しみやすさと優しさは、そんな一方的な親近感を許してくれるような気がする。
本編は阿佐ヶ谷姉妹のネタ、変ホ長調の漫才、庭園でお散歩
ついでの大喜利大会、合同コント。
合同コントだけ抜き出してみると、よく台詞を噛むし、演技も
少々たどたどしい。でもそれが何だというのだ!
まるで、町内会の奥さんたちが忘年会で演じる余興のコントを、客席の
お客さん達もご近所さんになったような気分で、頑張って~と
応援しながら見る。
開始してほんの数十分程で舞台上の4人だけではなく、お客さんとも
友好的な関係を築いてしまう。
これはある意味、関係性で見せるコントの極地じゃないか。
そして、2組のネタがそれぞれ本当に素晴らしかった。
2006年当時はお笑いに興味がなかったので、この年のM1の記憶は
ほぼない。アマチュアで出た人がいたんだと初めて知ったくらい。
今回、生で見る変ホ長調の漫才の面白さに驚いた。
ゆ~ったりとしたテンポ。普段見る漫才のテンポに比べてあまりに遅いので
最初は違和感があったけれど、慣れるとぬるめの温泉に肩まで
つかっているようなホンワカとした心地よさがある。
30代~40代にストライクな話題(ガラスの仮面!)、OL経験からの
身近な職場あるある、今すぐハタチの子供欲しいわーなんて独身女性
で集まると言いがちな未婚トーク。
生活と地続きの漫才がここにある!もっと聞きたい、ライブがあれば
毎月でも通いたい。しかしそれは叶わない。
思わずジタバタしてしまう。
阿佐ヶ谷姉妹の「阿佐ヶ谷ふたり暮らし日記」
舞台に立つ2人がそれぞれの日記を手に持ち、同じ日の記録を
朗読するというネタがあった。
表情豊かに朗らかに語る姉エリコさんと、少しとまどうように
無表情にぽつりぽつりと読む妹のミホさん。
六畳一間に共に暮らしながら、同じ出来事もそれぞれの目線で
見ればこんなに違う。
しみじみと切なく、ちょっぴり哀しく、あたたかい。
せっかく作ってくれた冷やし中華だけれどコレ、ぬるいわ。
ならば言わせてもらうけれど、お姉さんの作る汁物だっていつも味が薄い。
そんな些細な言い合いの場面があった。
「他人なのだから、ちゃんと口に出して言ってくれなければわからないわ」
この後に必殺のフレーズがあり、客席はドカンと笑っていたけれど
私は切なさに胸がつまって涙がこぼれそうになった。
人は年を重ねると意固地になりやすい、と思う。
とりわけ女性が独り身で生きるためには自分を強く保つことが必要で、
それと引換えにちょっぴり我が強くなるものなのだ。
とびきりプライベートな空間である「家」では、自分の住みやすい
ルールを作り居心地よく暮らしたい。
六畳一間にアラフォー女性がふたりで住むと、どうしたって耐えられない
瞬間が出てくる。
でも、2人はちゃんとわかり合おうとする。
阿佐ヶ谷の2人暮らしはこれからも続いていくのだから。
酔っ払ってめずらしく上機嫌のミホさんが、ハーゲンダッツをごちそうして
くれたとエリコさんが嬉しそうに語る。
酔いが覚めて、ハーゲンダッツ2個はやはり高かった・・・とミホさんは後悔する。
<阿佐ヶ谷は、今日も雨>
日記の冒頭に繰り返し出てくるフレーズが情景を色濃くする。
季節が変わるごとに更新されるのであれば、毎月見たいと願う
秀逸なネタだった。