2013年6月14日金曜日

ケン・ローチ 天使の分け前

いつでも庶民と同じ目線で国や社会を見つめ、作品を通して鋭い
疑問を投げかける。私の敬愛する映画監督ケン・ローチ。
 
上映期間もそろそろ終盤で、ファンはもうとっくに見ているだろうから
ネタバレするよ。
 
 
・・・今回は幸せな結末だったーーー!!(涙)
 
 
“ ウイスキーを樽で熟成させる場合、1年で2%ほど蒸発して中身が減る。
これをエンジェルシェア(天使の分け前)と呼ぶ。"
 
ケン・ローチ作品には自分ではどうしようもない辛い現実にもがき、
苛立ち、途方にくれる人々が描かれている。
生まれながらの貧困、苦労して学校を出ても職につけない絶望的な就職難、
否応なしに巻き込まれるドラッグや犯罪。
 
主人公達は自分のため家族のために、そこから抜け出そうと必死の賭けに出る。
時には犯罪に手を染めて。
「もちろん犯罪は許されることじゃない。
でも、じゃあ他にどんな手があるというんだ!」
観客が彼らの肩を持ち憤ってしまうのは、監督が背景や心情を丁寧に
ユーモアを交えて描写してくれるから。

彼の描く弱者の中には「一度罪を犯した者」も含まれる。
悔い改めた前科者には、やり直すためのチャンスが与えられるべきだ。
誰にでも罪人になる可能性はあるのだから
台詞にはなくともスクリーンから、そう語るケン・ローチの優しい声が聞こえる。
 
"コレクター垂涎の幻のウイスキーを盗む計画をたてる。
ただしほんの瓶4本分だけ・・・天使の分け前程度に。"
今回の映画では犯罪計画もささやかで(ハラハラしたけれど)、ラストは
ふんわりと幸せになれる。
 
ケン・ローチ作品は最後まで油断ならない。
必死の賭けに出て・・・その賭けに負けてしまう結末もあるから。
「SWEET SIXTEEN」はとびきり切なかった。
未来の象徴である若者が、まだ15歳の少年が迎える哀しい誕生日。
彼はただ、家族幸せに暮らす未来を夢見ていただけだったのに。
また、彼が度胸があり聡明な少年であったからこそ、犯罪の
深みにハマってしまったであろうことが辛い。
 
どうしてこんなことになってしまうんだろう、何がいけなかったんだろう。
見終わった後、目を閉じて考えてみると結局行き着くところは
貧しさの連鎖と未来のない地方都市の問題点。
社会構造の歪み。
 
社会に対する批判を声高に直接的に叫ぶのではなく、作品を通して
多くの人に訴える方法がある。
まだ学生だった私に、ケン・ローチは教えてくれた。
 
現在御年76歳。
新しい作品を撮り続けてくれることに感謝。