ひっさしぶりの談春さん独演会。
気がつけばこはるちゃんと春太くんが二つ目になっている。
どちらかというと弟子っ子達は志らく一門を追いかけていたけれど、
この2人も二つ目まで随分苦労が多かったのが見て取れたので
昇進おめでたい。談春一門はいま何人いるんだろう?
今回の開口一番は春太改め春吾さんの崇徳院。
話の後半では広い会場のお客さんからちゃんと笑いがおこって
客席を落語の空気に染めている。いい仕事っぷり。
談春さんの一席目。
まくらでは会場に来るために使った都電の乗客と、自分のキレやすい
性格をからめて三方一両損。
電車の話をからめるのがちょっと喬太郎さんっぽい。
電車と地域は繋がりが深いから地元のお客さんの興味を引くには
もってこいだよね。
落語はちょっとフワフワしていたような。
ちょこちょこ間違いがあってアドリブ台詞が目立ったかな。
あっ、五貫裁きと間違えたなんてこぼしていたけれど、私も久しぶりに
聞いたから
「朝に相手のうちに押しかけないな・・・あっ、五貫裁きじゃないや」
と混乱する。
二席目はお目当ての包丁。
うん、綺麗な噺をあまりオリジナリティ出さずに美しく語る
談春さんはいいなあ。
以前聞いたときはおあきさん&寅が美女美男に見えて、寅が
いい男に見えると内容が変わっちゃうなーと思ったんだけれど。
おあきさんは所帯じみているし寅もマヌケになってる。
それでもやっぱりブリのアラ顔には見えないけどね。
談春さんといえば文化人や業界人にファンが多く、独演会を
追いかける男性ファン(しかも中年~壮年くらいの)が会場に目立つ。
正直私は・・・少々苦手意識のある落語家さんだったりする。
落語に自分の思想を入れすぎていて、しかもそれを全て台詞で
説明するので、途中から談春講演会に来ているような気分になって
しまうのが理由の一つ。
あとは「一度相手にふっかけておいて、その直後に甘えや相手への
敬意を表して懐に入る」みたいなやりくちが、なんか、こう、あざといなー!と。
全てお客様のおかげです、と口では言いながら<客席を手玉に取っている俺>が
ちょっとはみだしてるよー!と。
ロビーで男性が連れの女性に
「なっ、談春かっこいいだろ?女なら惚れちゃうだろ?」
と自慢げに語っているのを見るとなんだか笑ってしまう。
彼女、微妙な顔で愛想笑いしてるよ。
男って単純でかわいらしい。女はより冷静に深く観察をする。
もちろんわかっていて騙されるのが好きなのさ、そこがいいんだよ
という男性もきっと多いし、そちらが大多数なのかもしれない。
騙しあいを楽しむ、客と遊女のような艶っぽい関係。
私は度量が狭いからそんな粋な遊びはできない。
落語ぐらい駆け引きせずに素直に楽しみたい。
・・・うーん、こう書くとまるで談春さんが嫌いなようだけど決して
そうじゃなくて。噺によっては好きなんだよー。
子猿七之助・鈴ヶ森のような講釈ネタは美しい。
百川はなんど聞いても笑っちゃうし、居残り佐平次のイノドーン!
からのラストの爽快さにはまいっちゃう。
悔しいけれどいい男。
包丁の兄ぃみたいなのかしら。